• ~旅と日々の出会い~
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41.「絵姿女房」仁多郡奥出雲町大馬木

収録・解説 酒井 董美 イラスト 福本 隆男
語り手 千原 貞四郎さん( 明治21年生)
(昭和47年8月2日収録)

あらすじ

 昔。独り男が野菜を町へ持って出て売っていたげな。

 たいした雨の降る年に竜宮(りゅうごん)さんに、「ちっと雨を降らせんように」と頼んで、野菜売りに出るたびに、野菜を橋の上から川へ投げて「竜宮さん、野菜を作らにゃならんに雨が降っていけませんけん、少し雨を降らせんように」と祈っていた。

 ある日、よい女が来て、「たいした養あてもらわいでもええけに、おまえの女房にしてごせえ」

 その男は、あんまりいい女なので、放っておいて仕事に出ることはいやで、似た絵を描いてもらって、自分の鼻先の竹に絵を挟んで、見ながらでないと仕事ができなくなったげな。そうしていたら、大風が吹いて、それを飛ばしてしまい、それが殿さんの庭へ落ちたげで、
「この女房、妃(きさき)に迎えて来い」と申しつけられたげな。

 家来は、
「女房は、殿さんとこへいま連れて行く」
「いやだ」
「殿さんの女房に出さんようなら、焼き縄三束持ってきて納めい」

 そこで男が女にその話をしたら、女は、
「みやすいことだ。その縄を三束ほどニガリ(苦汁)の中へつけちょいて、あげて、それを焼きゃあ、硬い硬い焼き縄縄になあけん」
「叩かぬ太鼓の鳴る太鼓、笛を吹いて舞う男、を持って来い」

 女房に話したら、
「山へ行って大きな蜂の巣う取って太鼓の中へ入れて蓋あして、持って行って、殿さんに『一人一間に入って蓋あ取らっしゃい』言いて持って行きなはい」

 男が持って行って、そう言うと、

 殿さんが一人一間へ入って蓋を取られたら、中から蜂が、ポン、ポン、ポン、ポン、ポンポコポンと言って飛び出してきた。殿さんを刺すやら何やらで。それから殿さんは口笛を吹いて舞い出されたら、男が、

「こうが『叩かぬ太鼓の鳴る太鼓、笛を吹いて舞う男』」と言うと、殿さんは、
「もっとむつかしいことを言いつけてやろう。大もっけ、小もっけつう者を連れて来うか、女房を渡すか」

 男はまた帰って女に話したげな。
「やあ、大もっけ、小もっけやな強ええ者が殿さんとこへ行ってしまってなら、殿さんの家が潰れえが、そうでもいいだらか」と言う。

 男はまた殿さんのところへ行ってそれを話したら、
「ああ、そうでもいいけん連れて来い」。男は帰って言った。

「そうでもいいけん連れて来いつうことだわ」。女はそれを聞くと、、
「おらが連れて来うけん」と言ったげな。その女が龍宮界の乙姫さんだったげで、その手下に大もっけ、小もっけというすごい者がいるが、男はそのことを知らず、女がそれを連れて殿さんの家へ行って腰をかけたら、殿さんの家がメラメラ-といって壊れてしまったげな。

 それで何でもほどを知らず、何でもかんでも人にむずかしことを言うものではないと。

 昔こっぽし。

解説

 関敬吾『日本昔話大成』で、本格昔話の婚姻・難題聟の「絵姿女房」として、その戸籍がある。

出雲かんべの里 民話の部屋 「絵姿女房」

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