収録・解説 酒井 董美
語り手 寺西スエコさん(大正3年生)
(昭和63年8月1日収録)
あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。
おじいさんが山へ木をこりに行たら、殿さんがお通りになった。
「そこで木を切る者はだれだか」
「わたしは日本一の屁こきじいだ」
「それでは一つ、そこでこいてみい」
「ここではこかれません」
「それでは畳の上でこいてみよ」
「畳の上は滑ってようこきません」
「ござの上でそれではこいてみい」
「ござは冷たくてこかれん」
「ムシロの上でこいてみよ」
「ムシロの上ではスバリが刺さってようこきません」
「わしが膝の上でこいてみい」
「そこならこきましょう」
日本一の屁こきじい
スッポンポンノ ポーン
とこきましたら、いい、とてもいい屁が出て、殿様は、
「これはみごとみごと、いい屁だ」と褒美をたくさんくださいました。
そこでおじいさんはおばあさんとこへ持って帰って、
「木を切っとったら殿さんがお通りになって、屁をこいたら、こんなにたくさん御褒美をもらった」と言って喜びました。。
そこへ隣のじいさんがやて来て、
「わしも行って、そいではこいてみようか」と言いました。
ある日、山に木をこりに行っとったら、殿さまがお通りになって、
「こないだの屁こきじいか。そこで一つこいてみい」
「ここではこかれません」
「それでは畳の上でこいてみよ」
「ここではこかれません」
「それでは畳の上でこいてみよ」
「畳の上は滑ってようこきません」
「ござの上でこいてみい」
「ござは冷たくてようこかん」
「ムシロの上でこいてみるか」
「ムシロの上ではスバリが刺さってようこかん」
「わしが膝の上でこいてみるか」
「それではそこでこきましょう」。
おじいさんは、
日本一の屁こきじい
スッポンポンノ ポーン
とこきました。
そうしたら、それは汚い汚い大きな大きな大じり糞を出してしまいました。
そのように汚いことをしたものですから、殿さまが、
「イド(尻)を汚いから切ってやろう」と、そうされました。
おじいさんは尻を切られて、泣き泣き家へ帰って、
「おばあさん、おばあさん、イドを切られて痛いが」言ったそうです。
それで人の真似はするもんではないいうことだそうです。
島根県のなかでも人気の高い昔話である。稲田浩二編の『日本昔話通観』島根編(同朋舎発行)で本県内の人気の昔話を調べると、一位が「和尚と小僧」で、二位がこの「竹伐爺」、三位が「鼠の浄土」である。ただ一位の「和尚と小僧」の話はいろいろの話をまとめて呼んだ総称だから、単独の話では「竹伐り爺」がトップということになる。