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出雲地方)アタさんなんぼ(子守り歌)

収録・解説 酒井 董美 イラスト 福本 隆男
伝承者 吉岡鶴之助さん 明治38年(1905)生
(1970年(昭和45年)7月27日収録)

♫

アタさんなんぼ      十三ここのつ

そらまんだ若いぞ

若うはござらぬ     いにとうござる

いなさる道で     サト餅買うて

だれにやろか     お万にやろか

お万が部屋は     今こそ見たれ

金襴緞子(きんらんどんす)のキリコの枕

解説

 天体を愛でる「お月さんなんぼ」の歌は各地でうたわれているが、いくつかの地方差が見られる。ここでは子守歌の遊ばせ歌といえるだろう。「そらまんだ若いぞ」などの詞章から見て伯耆地方から出雲地方にかけて伝えられている歌の亜流といえる。「若うはござらぬ、いにとうござる」が共通していることから、そうと知れる。例えば米子市富益町の歌。

♫

お月さまなんぼ     十三ここのつ

そりゃまんだ若いぞ

若ぁもござらぬ     いんとうござる

いなさる道で尾のない鳥が

竹の筒くわえて

かぶり かぶりござった

(松下ゆきこさん・明治34年生)

 松江市西生馬町の歌。

♫

お月さんなんぼ     十三ここのつ

そりゃまんだ若いの

若うもござらぬ     いにとうござる

いぬたかいなされ

いなさる道で

尾のない鳥が    油筒くわえて

あっちの方へホキホキ

こっちの方へホキホキ

(和田繁八さん・明治15年生)

 この「アタさん」という語句の起源は、柳田國男著の『小さき者の声』によると次の通りである。

 日本に仏教が渡来するより以前、人々が信仰の対象として崇めていた太陽や月を拝む際に発していた「アナトウト(ああ尊い)」の「アト」の変化したものではないかと考えられている。

 筆者は、島根県の西端、鹿足郡吉賀町柿木村柿木で、まさに柳田のいう「アトさん」で始まる次の歌を、この八束町で聞く7年前になる昭和37年に聞いている。

♫

アトさまなんぼ     十三ここのつ

それにしちゃあ若いの 若いこたぁ道理

胴馬へ乗せて  あっちへじろり  こっちへじろり

じろりの中で  よい子を拾うて

お千に抱かしょ  お千はいやいや  お万に抱かしょ  お万もいやいや

お万が部屋を  今朝こそ見たら  金の屏風に鹿子(かなこ)の枕

(小田サメさん・明治31年生)

 この月の古称を意味するアタとかアトの語を用いた歌は、筆者としては八束町と鹿足郡吉賀町柿木村以外の山陰両県では今のところ聞いてはいない。しかし、収録を続けていると、こうした古さをしのばせる貴重な伝承に出会うことがある。それがまたこのようなわらべ歌収録の言い知れぬ魅力になる。

出雲かんべの里 わらべ歌の部屋 「アタさんなんぼ(子守り歌)」

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