JR木次線を走る、トロッコ列車「奥出雲おろち号」が2023年度を最後に運行を終了することとなりました。
このトロッコ列車についても、「ラジオ深夜便」でお話しをさせていただいていました。そこでは、トロッコ列車の運行の目的は、「地域の魅力を発信すること」。発信する魅力とは「沿線の歴史や風土」、そして「景観」としあわせて、「住民の皆さんの取り組み」なども紹介させていただきました。
利用者などの数字は、2015年現在のものですが、改めて掲載させていただきます。
夏休みも近づいてきました。今日は、JR木次線を走る観光列車「奥出雲おろち号」の話をさせていただきます。
奥出雲おろち号は、JR木次線の木次駅から中国山地を超えて広島県の備後落合駅までの60.8㎞を走る2両編成のトロッコ列車です。
青と白の車体に星をちりばめたデザインの解放感ある車体が、先日お話をしたたたら製鉄の痕跡を色濃く残す棚田や、木炭を提供した山々そして、神話の川 斐伊川を縫って走ります。
この列車は、平成10年に運行をはじめ、これまでに約29万人の人たちが乗車されました。年間では概ね17,000人の皆さんが乗車してくださっています。
木次線は、朝夕の高校生の通学時間以外は便数も乗客も少なく、一時は廃止との声も上がっていました。そこで地域の魅力を発信する観光路線として沿線の住民の皆さんと自治体、JRの皆さんが一緒になって様々な取り組みをしているものです。
実際に地域の皆さんの協力で利用しなくなったホームを公園にしたり、プランターに季節の花を植えたり、運行時間にあわせて園児がホームに並び手をふったり、また行政は沿線にモミジの植樹をしたりと、町の皆さんと一緒になっておもてなしを進めています。「列車を見たら手を振って歓迎しよう。」といった自主的な取り組みもあります。
さて、奥出雲おろち号という名前ですが、トロッコ列車が走る木次線沿線がヤマタノオロチ退治の神話に彩られた地域だからです。
古事記によると高天原を追放されたスサノオノミコトは、出雲の国肥の河上鳥上の地に降り立ち、そこでクシイナダヒメを救うためにオロチ退治を行ったというお話です。
木次線はこの肥の河、今の斐伊川に沿って走っていますので、沿線にはオロチ退治にちなんだ場所がたくさんあります。例えば、出発地の木次駅の近くには、スサノオが川上から流れてくる箸を拾ったというヤマタノオロチ公園、オロチが住んでいたという天が淵、もちろん私が住みます奥出雲町はスサノオノミコトが降臨された「鳥上」という古い地名の残る町ですから、ここにもオロチの住んでいた鳥上滝とか、スサノオがオロチを追いかけた場所、稲田姫が産湯をつかった池、稲田姫を奉る神社、さらには退治されたヤマタノオロチの命日を決め供養する神社もあります。
(ちなみに、オロチ退治の当たり日は7月7日だそうです。)
奥出雲地方は、ヤマタノオロチ一色と言ってもいいくらいです。また、オロチ退治を製鉄の神話という方もいらっしゃいます。
私をはじめ奥出雲や出雲の人たちは、神話は創作のお話としてではなく、実際にあった話として語る癖があるようです。それほど神話が身近なものであったのでしょう。
神話の話は切りがないので、トロッコ列車おろち号に戻ります。
トロッコ列車は各駅停車なので、木次を出発し折り返しの備後落合まで全部で12の駅に停車します。(それぞれの駅には、神話にちなんだ愛称がつけられており、その由来と地元のデザイン専門学校の生徒が描いたイラスト看板が設置されています。)
途中にトンネルや鉄橋もありとても楽しめるコースですが、最も人気があるのは、出雲坂根駅から三井野原駅までの区間です。この区間は標高差が167メートルもあり、JR西日本唯一の3段式スイッチバックでこの急こう配な山の斜面を進行方向を変えながら上っていきます。
その斜面を登りきると、国道314号の奥出雲おろちループが見えてきます。またまたおろちの登場ですが、これは道路全体が2重にとぐろを巻くおろちの様になっており、この2重ループで167メートルの標高差を登る道路です。
三井野原駅は、標高726M。JR西日本で最も標高の高いところにある駅です。
車内販売もあり、仁多牛弁当などが人気です。途中の亀嵩駅は駅舎が蕎麦屋さんになっているものですから、事前に電話をしておけば列車までお蕎麦を出前してくれます。
また、文化財ガイドや、観光ガイドが乗車する日もあり、多くの皆さんに楽しんでいただける列車だと思います。運行は4月の初旬から11月の紅葉の時期までの土・日・祝日ですが、夏休み期間中と紅葉のシーズンには毎日走っています。
ぜひ、トロッコ列車で奥出雲の風を感じてください
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