• ~旅と日々の出会い~
SNSでシェアする

地域とともに歩むリゾートオフィス試行 

宿泊施設を兼ね備えた「奥出雲多根自然博物館」

「宇宙の進化と生命の歴史」をテーマに、約40億年におよぶ生命の歴史を物語る多くの化石の展示と、研修施設やホテルとレストランを併設したユニークな博物館(あるいは宿泊施設)。宿泊者は昼間と違う神秘的なナイトミュージアムを楽しむことができます。6階の展望ラウンジからは山間の田んぼや集落が望め、また道を挟んで美肌温泉「長寿の湯」があります。温泉宿とは違う地元の人との交流を楽しむことができます。奥出雲ののどかな風景と地元の人との肌を触れ合うひと時は、「神話の国・島根」の楽しい思い出となるでしょう。

松江方面から国道25号線をスサノヲが降り立った「鳥上山」(現在の船通山)のある奥出雲に向かって走ること一時間。山間の小高い丘に白い塔が現れます。これが宿泊施設もある多根自然博物館の目印です。

■博物館

 入館してすぐ目前に迫るのは、約1億5千万年前のジユラ紀後期を生きた前全長9メートルのアロサウルスの骨格標本。恐竜の化石、鉱物、岩石など約3千店が展示されています。一階はビックバンから始まる宇宙と地球の歴史、二階は海をテーマにした展示です。小学生には楽しい空間。

今回、お薦めしたいのは、三階の「ふるさとの古代展示室」。たたら製鉄とカンナ流しなどの非常に貴重な写真資料が展示され、奥出雲の古代・中世の産業・文化を分かり易く伝えています。

いろいろなご意見もあるでしょうが、私は「製造業」が強くなければ日本経済の基盤が揺らぐと考えます。農産物も自給自足ができなければ国は亡ぶと同じです。サービス業だけでは経済成長期はないでしょう。下町の職人の技、地方に存在する匠の技、たたら製鉄は日本の製造業の魂を見ることができます。仕事で訪れ、宿泊するビスネスマンの方には是非、お薦めです。ここを拠点にたたら製鉄の三大鉄師(絲原家、櫻井家、田辺家)や卜藏家、そしてそれぞれにある鉄の記念館を訪ねてください。ソリューション思考に心を吹き込むことでしょう。

■宿泊施設と研修室

 二階は研修室として使用されています。客室は、三階が二段ベッドもある恐竜ルーム、四階、五階はツイン―ルームにトリプルルームです。部屋の詳細や食事については、多根自然博物館に直接お尋ねください。

■地域とともに (宇田川和義館長との対談より)

「地域とともにありつづけたい」と宇田川さんはお話しされる。都会の文化を奥出雲にもたらすのではなく、奥出雲の自然と文化でお迎えし、体験して、共感して頂く。奥出雲の有形無形の文化と価値を伝える。そのためにはコンクリートの建物でなく、残された地域の古民家を活用したいと。また奥出雲には「たたら製鉄」の文化を伝える多くの建物があります。そのひとつが三大鉄師として地元の産業・文化に貢献してきた絲原家、櫻井家、田辺家。すでに建物や庭園を開放し、たたら関係だけでなく貴重な歴史的遺産を公開しています。そんな奥出雲が誇る文化や建物とも連携したいと。

宇田川館長はつづけます。大切なのは古民家や歴史的な家屋だけではないと。蕎麦をはじめとした食文化の再生と体験、自然との共存としての植林の活動。そんなことをすべてまとめて、多くの人たちとの勉強会や交流会が大切だと。地域創生のひとつの在り方です。

また、企業との交流も考えておられる。都会のオフィスの中で企画を考えるのではなく、ここに一週間ぐらい滞在して、午前中はネット会議システムを活用した企画会議をし(リモートオフィス)、午後は地元の人々との交流を兼ねたボランティアや蕎麦うち体験、夜は温泉に入って地元の人と酒を飲みながら未来を語る。解き放たれ、ぼーとした環境にたたずむ時に楽しいアイディアは浮かぶでしょう、と逆に問われた。地元の交流を核としたリゾートオフィス、期間限定のリモートオフィス。風光明媚な観光地のリゾートオフィスとは一味違う地域生活と密着したリゾートオフィスの展開が楽しみだ。

※博物館や宿泊施設情報については、事前にご確認ください。

公益財団法人 奥出雲多根自然博物館
島根県仁多郡奥出雲町佐白236-1
Tel 0854-54-0003

→「古民家とリモートオフィス」に戻る