今回は雲州そろばんの町についてお話しします。
先日、町内で行なわれて講演会で、講師から「ハンガリーで注目されるそろばん」の話がありました。また、大人のリハビリ活動にそろばんを活用しようという話もいただきました。
外部から指摘されての話で申し分けないのですが、改めて「雲州そろばんの町」の話をしようと思います。
内容は2016年当時のことで、「大人のそろばん教室」全国に拡げていこうという大きな仕掛けの基に行なわれました。実証事業は終わりましたが大人のそろばん教室は今も楽しく続けられています。
文中 算盤という用具そのものを表す場合は「算盤」と表現。算盤という道具を活用したソフト活動などを表現するときには「そろばん」と標記しています。
今日は地域の特産品算盤を活かした「大人のそろばん教室」の話をしようと思います。
奥出雲町は、日本一の算盤の産地としても有名で、今でも年間数万丁の算盤を生産し全国のそろばん塾で学ぶ皆さんに届けています。また、25年以上前からこのそろばんを活かした国際協力・交流事業に取り組んでおり、ニュージーランド、タイ、ラオスといった国のそろばん普及に協力してきました。また、近年はハンガリーでのそろばん教育の取り組みにも算盤の産地として協力をしています。
そろばんには数の仕組みがよくわかる。論理的な思考が身につく。集中力がつく。といった効果があるといわれています。また、算盤自体が優れた教育機器だともいわれています。
今回は、この地域の資源であるそろばんを「認知症の予防や改善といったヘルスケアに役立てよう」と始まった。大人のそろばん教室の話です。
このそろばん教室の代表で、算盤製造会社の社長の松浦正敏さん、指導をしていただいている、そろばん塾の石井康男先生にお話を伺ってきました。
今年の10月から始まった教室で、現在65歳から82歳までの男女各16名計32名が参加して、週1回毎週火曜日に、「雲州そろばん伝統産業会館」の会議室で行われています。
そろばんは目で数字を見る、あるいは耳で数字を聞く、そして指を使って珠をはじいて計算します。この視覚や聴覚を使い集中して指を動かすというのは脳の様々な部分を刺激して活性化していくことになり、これが認知症の予防や軽減に効果があるといわれてきました。
奥出雲町では奥出雲の「食」、実はこれも認知症予防に良いといわれエゴマ栽培が盛んです。そして「温泉」、美肌の湯でのリラックス効果。「自然」ではトレキング・登山に適したコースもあります。そこに「地域産業」日本一のそろばん産地であることなどを掛け合わせて「健康」を生み出すヘルスツーリズムのプログラム開発を行おうとしています。この「大人のそろばん教室」は、その実証のための講座でもあるそうです。
そろばんの持つ効果については、算盤製造にかかわっている人達も、国際協力事業に取り組む指導者の皆さんも、それぞれが経験的に「自信」と「確信」を持っているのですが具体的に実証されているわけではありません。
この教室では医学的な検証とかデータの取得が目的に掲げられているので、今回参加された皆さんには取り組む前と後に脳のCTスキャンや、血液検査に協力してもらう必要があります。
大げさな目的を持った「大人のそろばん教室」に、本当に協力者が集まってくれるのだろうかと代表の松浦さんは不安だったようです。
そこで、実際に参加者を集めるときには「みんなで楽しむことが大切」との思いから、難しい目的よりも「みんなで楽しく大人のそろばん教室」を合言葉に説明をして歩かれたそうです。
指導者の石井先生も、普段教えている小学生や中学生とは勝手も違いますし、どのような教材を使えばいいのかも不安があったようです。そこで、大阪府の貝塚市で「健康いきいきソロバン教室」を続けていらっしゃる小瀧ヨシエ先生の教室を視察し、細かな準備を続けてこられました。
昨日、実際の教室を見せていただいたのですが、最初にみんなで大きな声を出して指の準備体操と大声で笑ってから、先生が読み上げる数字を計算する読み上げ算、次は紙に書かれた数字を計算する見取り算と続いていきます。
もちろん足したり引いたりするだけではなく、算盤を使った掛け算や割り算も行っていらっしゃいます。
すでに、3級程度の3桁から5桁の足し算と引き算が混じった問題。3桁から4桁の掛け算や割り算など、結構難しいテキストを使っていらっしゃいます。
子どもの塾と違うのは、みんなで休憩してお茶を飲んだり、おしゃべりする時間も十分に取ってあることです。競い合うのではなくそれぞれのペースで楽しく行うのが大切という考えからです。
ただ、皆さんはちょっとだけ休みおしゃべりを楽しむと、すぐに個人練習に取り組まれていました。石井先生は「集中力は子供よりはるかに高い」とおしゃっていました。
実は、昨日は月に1度の時間を定めたチャレンジの日で、後半は2級の問題に取り組んでいらっしゃいました。採点は自己採点で、戦う相手は先月の自分です。先月より一つでも多く問題が解ければ目的大達成です。
参加者からは「楽しい」「割り算や掛け算の仕組みもわかり、この年になって「わかる」という喜びを感じている」、「競争ではなく、自分で学ぶというのも楽しい。」
「65歳から85歳までの年の差もおもしろい」そして、なによりも「1週間に一度集まって、ぱちぱちと珠をはじき一緒にお話をしたりお茶を飲んだりするのが楽しい」といった声を聴かせてくださいました。
代表の松浦さんも「最初は心配していたが、何よりも出席率が高くほとんど欠席がない。集まること意義があり、受講生も指導者もみんないきいきしています」と話してくださいました。
3月には、2度目のCTスキャナや血液検査もあるようですが、その結果はともかく、この教室を「皆で続けていこう」と大盛り上がりです。
また、全町的な取り組みや、さらには奥出雲発の全国的な事業に発展させていきたいといった思いも伺うことができました。
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