• ~旅と日々の出会い~
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流人だけじゃない! 貴族の食卓を彩った隠岐の海の幸 

いかがお過ごしでしょうか、「かむやけ」です。
本年もよろしくお願いいたします。

今冬はさまざまなハードルが高く、なかなか旅行にもいけませんね。
全国各地の名産をお取り寄せして旅行気分を味わうのもよいかもしれません。
今は日本海の冬の幸がおいしい季節です。

さて今回は島根県の離島、隠岐についてのお話しです。

隠岐の宿のとある夕食。海の幸がてんこ盛り。

隠岐というとみなさんどんなイメージを持たれるでしょうか。
歴史好きの方なら、後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流された「流人の島」が思い浮かぶでしょう。

古代においても、遣唐使を拒否した小野篁(歌人としても有名)など、数々の貴族が隠岐に流されています。
ですが、古代の隠岐の最大の特徴は、天皇や貴族の食膳に並べられた豊かな海産物を都に届けていたことなんです。

古代、都には全国からさまざまな産物が税(調などよばれる)として運ばれていきました。
一般的に、他の国は布や綿、絹などの繊維製品が主なのですが
実は隠岐国だけは、ほぼすべてが海産物だったのです。

奈良県の平城京などの都の遺跡からは、「木簡」とよばれる税物にくくりつけられた木の伝票がたくさん出土しています。
隠岐国から運ばれたものも120点以上もみつかっていて、それによると、
ワカメやノリ、イカやアワビといった現代の隠岐の特産品と変わらない海の幸が遠く都まで運ばれたようです。

特にアワビは「隠岐鰒」と古代の史料に書かれるように「ブランド」化していて
朝廷のさまざまな宴会で天皇や貴族の御膳を彩りました。

私も隠岐に行く時は、必ず魚介類をたらふく食べ、お土産に買って帰ります。
昔も今も、隠岐の海の恵みは日本の人々の心身を豊かにする宝庫だったんですね。

ほかにも隠岐には、現存唯一の古代の駅鈴(馬に乗るための許可証。億岐家宝物館で展示)や
隠岐造とよばれる独特の神社建築など、いにしえを感じさせるスポットが数多くあります。
ぜひ訪れてみてください!

島前は太古の火山活動で形成された小さな島々で形成され、内海は驚くほど穏やかです。
隠岐独特の建築形式の玉若酢命神社本殿(隠岐の島町)

(かむやけ)

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