こんにちは、「かむやけ」です。
今回は海の洞窟にまつわるお話しです。
松江市中心部から北にバス・車で30分ほどの場所にある加賀港では
海の洞窟「加賀の潜戸」遊覧船が定期運行しています(3~11月)。
ここは、太古の昔からの海の浸食でT字型に洞窟が形成されており遊覧船で中を通ることができます。
外海は日本海らしく波が高いこともしばしばですがひとたび洞窟に入ると、波は消え静寂が訪れ、非常に神秘的な空間です。
また「島根半島・宍道湖中海ジオパーク」の1つにも数えられるように太古の火山活動の痕跡を間近に見ることのできるスポットとしても知られています。
船の上から大地と海が作り出した「自然美」を堪能できます。
さて、加賀の潜戸は『出雲国風土記』では「加賀神埼(かかのかんさき)」として登場します。
そこには、この洞窟で「佐太大神」が生まれたと書かれています。
そして、流れてきた金の弓矢で射通したことで、暗い洞窟が明るくなったという神話も記されています。
自然の作り出した洞窟の不思議な景観を、神の仕業にたとえた古代出雲びとの豊かな発想力に驚かされます。
また風土記には当時の船乗りの興味深い言い伝えも記されています。
「この洞窟を通る時には、必ず声をあげたり石を投げて音を出す。もしこっそり通ると、神が現われて突風が起こり、船が必ず転覆してしまう。」
1300年前のこの地の人びとは、洞窟を神のいらっしゃる場所として畏れていたのでしょう。
時を経て明治時代、一人の外国出身の英語教師が松江にやってきます。
彼の名はラフカディオ・ハーン、のちに帰化し小泉八雲と名乗ります。
『怪談』などの著作で知られ、日本独特の伝承・習俗・文化を世界に広めた人物として知られています。
彼は松江滞在中、この洞窟を訪れています。そして船の中でこんな光景を目の当たりにします。
「突然、船頭の婆さんが船底から石を取り上げ、舳先(へさき)を強く叩き始める。虚ろな音が、洞内中に雷鳴のごとく、木霊(こだま)を繰り返す。」
(小泉八雲『知られぬ日本の面影』、池田雅之訳)
八雲が出会った船頭の行動は、まさに風土記の言い伝えそのものだったのです。
神が船を転覆させないように音を立てて洞窟を通るという風習は、1000年以上の時を超え、生き続けていたのです。
今の遊覧船では大きな音を立てることはしませんが、加賀の潜戸にまつわるさまざまな神話・伝承を船の中で聞くことができます。
ぜひ乗ってみてください!
(かむやけ)
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