収録・解説 酒井 董美 イラスト 福本 隆男
語り手 小野寺賀智さん( 明治23年生)
(収録日不詳)
あるところにねえ、お母さんが死んで、また後のお母さんをもらいましたそうな。
六つぐらいな男の子に、後のお母さんはお父さんの留守には、ご飯を全然食べさせようとしません。
子がよそへ行っても、そこの家で、
「はあ、いにんさいよ。ご飯じゃからね」と言うので、その子がもどって、
「お母さん、ご飯を食べさして」と頼んでも、「今ごろご飯を食べるバカはおらん。遊びに出んさい」と追い出すそうです。いつもお父さんの留守にはご飯を食べさせません。
ある日、その子がまた同じことを言ってもどって来たので、
「そねえにご飯が食べたけりゃあ、あんな下の地蔵さまへ、このムスビよう持っちってあげて、地蔵さまが食べんさったら、おまえにも食べさしょうが、そうでないとご飯を食べさせん」とお母さんが言
いました。
すると、その子は喜んでそのムスビを地蔵さんに持って行って、お地蔵さまに向かって、
「地蔵さま。どうぞこのおムスビを食べてください。こりょう食べてくださったら、わたしもご飯をもろうて食べることができますが、そうでないとわたしゃあ、いつもお父さんの留守にゃあ、ご飯をようもろうて食べません」と泣いて頼んでいましたら、その石のお地蔵さまが手を出して、そのおムスビをつかんでパックパック食べ始められました。
その子は、家へとんで帰り、お母さんに、
「やっあれ、お母さん。お地蔵さまがムスビを食べんさるから、わしにも食べさしてくれえ」と言いますと、お母さんは、
「バカたりょう言うな。石のお地蔵さまがムスビゅう食べんさろうことがあろうか。おまえがそう言うて食べたんじゃろう」と言います。しかし、男の子は、
「いや、そうじゃあない。来て見んさい。隣のおばさんも来て見んさい。今食べよりんさる」と言います。
このようにその子があまり騒ぐので、連れだって行って見ると、石の地蔵さまは頬ぺたへご飯をつけられたりしながら、やっぱりパックパック食べ続けておられる。
お母さんはびっくりしました。
「わああ、こりゃあわしが悪かった。今までご飯を食べさせないような悪いことをしたが、石の地蔵さまがおムスビなんぞを食べんさろうことはないのに、こういう見せしめをわしにしんさるに違いなあけえ、これからぁこの子にご飯を食べさせます」とお詫びを言って、それからは自分の本当の子のように、その子をかわいがったということです。
継子譚に属する話だが、関敬吾博士の『日本昔話大成』の中には話型登録がない。単独伝承型であろう。わたしのこれまでの収録でも、同様に同類の話を聞いたことがない。
慈愛溢れる地蔵信仰を背景に成立した昔話である。
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