収録・解説 酒井 董美 イラスト 福本 隆男
語り手 春木 務さん( 明治44年生)
(昭和61年8月18日収録)
とんと昔があったげな。キツネとカワウソと、それからサルが塩と小豆とゴザを拾ったげな。それでキツネが言うことには、
「おまえ、サルさん、木の上にいてだけん(いるのだから)、ゴザがいいかも知れん」とゴザをやった。それからカワウソには、
「おまえは水のああとこにおってだけん、塩気がなかろうから塩を持っていんだらええ」。カワウソは塩をもらって行く。キツネは、
「ほんなら、おら、小豆持っていぬる」と持って帰った。
明くる日になった。
サルは木の上にゴザを敷いて寝たら、滑って大怪我をするし、カワウソは塩が溶けてなくなってしまった。 ところが、キツネは小豆を腹いっぱい食った後、小豆の皮を顔の方にひっつけて、二人が怒ってやって来たら、「うう-ん、おらもおまえ、ものが出てえらい目にあった」と言って、二人をだましたということだ。こっぽし。
出雲かんべの里館長の錦織明氏が大谷小学校長だった頃、語り手の春木務さん(明治四十四年生)を紹介して頂いた。出雲弁の素朴な語りで、筆者の希望に次々と語り、歌ってくださった。
私が勤務していた島根大学の研究室にアメリカのセントラルワシントン大学から留学してきたアリータさんを、つれお訪ねした時も大変歓迎された。
さて、「キツネとカワウソとサルの拾いもの分配」について解説する。
関敬吾『日本昔話大成』によれば、動物昔話の「動物分配」の中にある
類話は東北から九州まで分布している。福岡県築上郡や高知県高岡郡などではキツネに代わってタヌキが主人公になっている。どちらかというとキツネの方が多いようだ。島根県内では大田市富山町や江津市都治町に類話がある。大田市の二例ではキツネとタヌキの両者の場合が別個に存在し、江津市の方はタヌキとなっている。
ここ玉湯町ではキツネが主人公で、その知恵を生かして狡猾者たる本領を発揮し、人のよいサルやカワウソを騙して一人だけよい目を味わうという結果で終わっている。ここで思い出されるのが「猿蟹合戦」であろう。
今回の話はサルが被害者になり、「猿蟹合戦」で蟹の柿を独り占めしたサルが罰を受けることはない。
また、似た話として「猿と川獺の交換」ある。
どことなく類している。
出雲かんべの里 民話の部屋 「キツネとカワウソとサルの拾いもの分配」
スイッチバック大全: 日本の“折り返し停車場” 江上 英樹/栗原 景▼
明治の津和野人たち:幕末・維新を生き延びた小藩の物語 山岡 浩二▼
時代屋の女房 怪談篇 村松 友視▼
あの頃映画 「時代屋の女房」 [DVD] ▼
『砂の器』と木次線 村田 英治▼
砂の器 デジタルリマスター 2005 [DVD] ▼
砂の器(上)(新潮文庫) 松本 清張▼
フジテレビ開局60周年特別企画「砂の器」オリジナルサウンドトラック▼
出雲国風土記: 校訂・注釈編 島根県古代文化センター▼
小泉八雲 日本の面影 池田 雅之▼
ヘルンとセツ 田渕 久美子▼
かくも甘き果実 モニク・トゥルン (著), 吉田 恭子 (翻訳)▼
出雲人~新装版~ 藤岡 大拙▼
出雲弁談義 単行本(ソフトカバー)藤岡 大拙▼
楽しい出雲弁 だんだん考談 単行本(ソフトカバー)藤岡大拙/小林忠夫▼
人国記・新人国記 (岩波文庫 青 28-1)浅野 建二▼
QRコードで聴く島根の民話 酒井 董美▼
随想 令和あれこれ 酒井 董美▼
日本の未来は島根がつくる 田中 輝美▼
石見銀山ものがたり:島根の歴史小説(Audible) 板垣 衛武▼
出雲神話論 三浦 佑之▼
葬られた王朝―古代出雲の謎を解く 梅原 猛▼
島根駅旅 ─島根全駅+山口・広島・鳥取32駅▼
おとな旅プレミアム 出雲・松江 石見銀山・境港・鳥取 第4版▼
しじみ屋かわむら 島根県宍道湖産大和しじみ Mサイズ 1kg▼
神在月のこども スタンダード・エディション [DVD]▼
クレマチスの窓辺 [DVD]▼
RAILWAYS [レイルウェイズ] [DVD]▼
日本ドラマ VIVANT blu-ray 全10話 完全版 堺雅人/阿部寛 全10話を収録 2枚組▼