• ~旅と日々の出会い~
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47.「団子婿」松江市八雲町市場

収録・解説 酒井 董美 イラスト 福本 隆男
語り手 稲垣カズコさん( 明治39年生)
(平成3年11月16日収録)

あらすじ

 昔。だらず婿がいた。また山の山の奥の方の一軒屋で呼ばれえことになって、川には橋はなかって、飛石を渡ってぴょんこぴょんこ跳んで呼ばれて行くことだけん、たいへんはずんで行きたげな。

 そしてお膳が出たら、大きなお椀にお団子がいっぱい入れて、そうして、豆の入った、今でいうぜんざいのことで、「まいこと」言って何にも例えられんほどまいご馳走だったげな。

 そうから、「いんだら忘れんやにかかさんにこっさえてもらわないけんがなあ」と、まことに団子のことばっかあ思っておったげな。

「今日は何て言っていい日だったやら、一番好きな団子のご馳走呼ばれて、こら忘れんやにいんで言わんなんけん」て、ま、そこの家の人に礼の一つも言わならんに。

 そうからいよいよ別れて自分のとこへいなんならんに、駆けってその飛石をぴょんぴょぴょんぴょん渡りよったら、「団子」てことが頭から忘れてしまって、「困ったなあ。どげだったかいなあ」て考ええだどもなかなか「団子」てことが言われん。

 いろいろ考えたども、どうもしゃんとしたことが分からん。

 そうから、わが家、もどって、

「今もどったわ」て言ったら、そこのおかかが出て、「もどったか。ご馳走があったらがの。何のご馳走になっただや」「はあー”ご ”のご馳走になったで」「”ご”のだけ言ったてて何のことだい分からんがな。どぎゃんもんだった」。

 あんまり、かかが責めえもんだけん、「ああ、あげだった。。ヒョンゴ、ご馳走になった」

「ふーん、そらまた変わったことだなあ。どげなもんだったかい」
「どげもこげもねえわい。ヒョンゴのご馳走になった」

 そうしたら、かかさんが怒って、け、そこに火を吹く吹き竹があったやつ取って、

「こーんなばかめが、ほんに。だらくそにもほどがああ」てって、

 その吹き竹でけえ、頭をツッカーンとこうたたいたげな。そげしたら、

「やーあ、痛かった。こな、かかさん、たいてい知れたもんだがの。言われんってたてて言っちょうにかあに。はーあ、痛かった、痛かった。ま-あ……、あら、まあここに団子みたいな瘤が出たがの、まあ、かかさん、こらあ。ここ見てごっさい」て言った。

「はあ、ほんだったなあ。そーらまあ団子より大っきな瘤だがなあ」

「あっ、あげだった団子のご馳走だった」てって、だらず婿がそこで初めて分かったということで、こっぽり。

解説

皆さんもどこかで聞かれたことのある懐かしい昔話だと思う。ただ、婿が「ご」と誤って言うところは、地方によって「ピットコショ」「ヒョンゴ」など様様である。

関敬吾『日本昔話大成』によれば、笑話の「愚人譚」、「愚か聟(息子)」の中に「団子聟」として、この話型が登録されている。

山陰地方ではこれらを佐治谷話として語られている場合も多い。

出雲かんべの里 民話の部屋 「団子婿」

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