収録・解説 酒井 董美 イラスト 福本 隆男
語り手 渡辺休二郎さん(明治40年生)
(昭和48年8月4日収録)
昔 々 ある ところに、 ちょうどおまえ たちみた いな、かわいげな女の子がおったそうです。
ところが、 それがかわいそうなことに鼻が低かったので、 その子のお母さんが何とかして、 鼻を高くしてやろうと、 いつも心配していたら、 ある日のこと、ちょうど鼻なおしがやって来ました。
「 鼻なおしいい。 鼻なおしい」 と門を通ったので、
- こら、 ええことだなあ- と思って、
「 鼻なおしさん。 この子は鼻が低うてやれんで、 何かでなおいてもらわれせんかな」
「 さあ、 何でなおしましょうかな。 ここにちょうど飴
( あめ) がああけん、飴でなおいちょきましょう」
それで、 飴でなおしてもらったら、 甘いので、 やっぱりこう舌を出しては、 鼻をなめて、 とうとうまた鼻がなくなってしまいました。
- こ ら 困 った こ と だ なあ - と 思 って い ます と、 また、 二、三日したら、
「 鼻なおしいい。 鼻なおしい」 と鼻なおしが門を通りました。
そこでお母さんが、「 鼻なおしさん、 鼻なおしさん。 飴でなおしてもろうたら、 とうとうこの子がなめて鼻がのうなったで、
また、 何かなめんやなもんでなおいてもらわれせんかな」 と言うと、
「 さあ、 何でなおしましょうかな。 ここに蝋燭( ろうそく) がああけん、 それでなおいちょきましょう」 と鼻なおしさんは蝋燭でなおしてくれました。
今度は鼻が出ると、 子どもが着物の袖でちょっとこうなでます。 そうすると右へなでると右の方へ鼻が傾くし、また、 左へなでると左の方へ傾くしして、 また、 鼻がなくなってしまいました。
それで、 おまえたちも、 鼻が出たときには、 舌を出してこうなめてみたり、 それから、 着物の袖でさあっと、 こう鼻をふいたりすつと、 あのように鼻がなくなるから、 あのようなことをするんじゃないよ。まあ、そればっかり。
これはまたユーモアにあふれた、 そして微笑みながら聞くことのできる変わった話である。 各地にあってもよさそうだと思うのであるが、 どうしたことか関敬吾『 日本昔話大成』 にもこの話は出ていない。 つまり大田市で残されている単独伝承の話である。
おそらく子どもの教育のため、面白い中にもそれとなく教訓をちりばめて作られた話であろうと思われる。
昔話をよく見ると、 隣人型の「 花咲爺」 や「 瘤取り爺」、 あるいは「 猿地蔵」「 鼠浄土」 などでは、「 人まねをするものではありません」と教訓がついている。 この話では洟が出る場合の心構えを説いているのである。
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