• ~旅と日々の出会い~
SNSでシェアする

67.「唐人の寝言」隠岐郡隠岐の島町津戸

収録・解説 酒井 董美
語り手 小野イヨさん( 大正5年生)
(昭和52年7月29日収録)

あらすじ

唐人の寝言には

オオショ テレスコ

アンネーロ    ギンカニ    キンカニ

キンチョウサイテテーレース

イチズクヤーノ

オトトコシンタン    カンポンタン

イラナイショウボワ

ズンベラ    ボントコ    ネーターカ

ツウパアパ

解説

「あらすじ」としたが実際は聞いた話そのままである。

 昭和五十二年の七月と八月。県立隠岐島前高校郷土部は、隠岐の島町都万(旧都万村)の民話や民謡、わらべ歌などを収録するために四泊五日で旧都万村の遊魚管理センターで合宿した。そのおり、筆者がうかがった歌の一つがこれである。歌ってくださった小野さんは、大正五年生まれで、当時六十一歳だった。何人かのお孫さんを前に、楽しそうに教えてくださった。小野さんの話では、この歌には特別の意味はないが、なるべく早く言い間違えずに言うのがおもしろくて、友だちと言い合って楽しんだとのことです。早口言葉の一種です。

 それから二年後、同校郷土部と松江市立女子高校民話研究会の合同調査を旧五箇村で行いました。たまたま同類が見つかった。それは先のものとあまり違わない次のような詞章だ。

唐人の寝言には
オオシュ テレスク
ネイーソウ キンカネ
ギンカネ ギンチョウ
サイテ ヤータラ
ボータラ オトトコ
シンタン    カンポンタン
ヒラナイソウカ
ズウベラボン    スットコ
ネイタカ ツーパーパー

(吉山イナコさん・大正十三年生)

 以前は外国人のことを唐人と呼んでいた。歌の出だしの「唐人の寝言には」こそ日本語であることは理解できるが、それから後の詞章では「キンカネ、ビンカネ」が「金かね、銀かね」とでも受け取られるが大半はどう考えても意味不明で、外国語のような詞章が続いている。

 それを言い間違えずに、より早く言った者が勝利するという。子どもたちが喜びそうな遊びになっているところに、この歌の存在意義がある。

 詳細は省略するが同類は,同郡海士町保々見の徳山千代子さん(明治三十七年生)からもうかがっている。

 筆者としては、今のところ隠岐以外では、まだ収録をしていない歌である。けれども、以前、確かにどこかで聞いたことがあるように思えてならないが、それがはたしてどこだったのか、思い出そうとしてもなかなか思い出せないのである。

出雲かんべの里 民話の部屋 「唐人の寝言」

→「文芸のあやとり」に戻る

→「自然と文化」に戻る