• ~旅と日々の出会い~
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72.「竹伐り爺」飯石郡飯南町八神

収録・解説 酒井 董美
語り手 寺西スエコさん(大正3年生)
(昭和63年8月1日収録)

あらすじ

 あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。
 おじいさんが山へ木をこりに行たら、殿さんがお通りになった。

「そこで木を切る者はだれだか」
「わたしは日本一の屁こきじいだ」
「それでは一つ、そこでこいてみい」
「ここではこかれません」
「それでは畳の上でこいてみよ」
「畳の上は滑ってようこきません」
「ござの上でそれではこいてみい」
「ござは冷たくてこかれん」
「ムシロの上でこいてみよ」
「ムシロの上ではスバリが刺さってようこきません」
「わしが膝の上でこいてみい」
「そこならこきましょう」

〽日本一の屁こきじい
スッポンポンノ    ポーン

とこきましたら、いい、とてもいい屁が出て、殿様は、
「これはみごとみごと、いい屁だ」と褒美をたくさんくださいました。

 そこでおじいさんはおばあさんとこへ持って帰って、
「木を切っとったら殿さんがお通りになって、屁をこいたら、こんなにたくさん御褒美をもらった」と言って喜びました。。

 そこへ隣のじいさんがやて来て、
「わしも行って、そいではこいてみようか」と言いました。

  ある日、山に木をこりに行っとったら、殿さまがお通りになって、

「こないだの屁こきじいか。そこで一つこいてみい」
「ここではこかれません」
「それでは畳の上でこいてみよ」
「ここではこかれません」
「それでは畳の上でこいてみよ」
「畳の上は滑ってようこきません」
「ござの上でこいてみい」
「ござは冷たくてようこかん」
「ムシロの上でこいてみるか」
「ムシロの上ではスバリが刺さってようこかん」
「わしが膝の上でこいてみるか」
「それではそこでこきましょう」。

 おじいさんは、

〽日本一の屁こきじい
スッポンポンノ  ポーン

とこきました。

 そうしたら、それは汚い汚い大きな大きな大じり糞を出してしまいました。

 そのように汚いことをしたものですから、殿さまが、
「イド(尻)を汚いから切ってやろう」と、そうされました。

 おじいさんは尻を切られて、泣き泣き家へ帰って、
「おばあさん、おばあさん、イドを切られて痛いが」言ったそうです。

 それで人の真似はするもんではないいうことだそうです。

解説

 島根県のなかでも人気の高い昔話である。稲田浩二編の『日本昔話通観』島根編(同朋舎発行)で本県内の人気の昔話を調べると、一位が「和尚と小僧」で、二位がこの「竹伐爺」、三位が「鼠の浄土」である。ただ一位の「和尚と小僧」の話はいろいろの話をまとめて呼んだ総称だから、単独の話では「竹伐り爺」がトップということになる。

出雲かんべの里 民話の部屋 「竹伐り爺」

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