• ~旅と日々の出会い~
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78.「瘤取り爺」仁多郡奥出雲町大呂

収録・解説 酒井 董美 
語り手 安部イトさん( 明治27年生)
(昭和45年7月15日収録)

あらすじ

 昔。じいさんとばあさんがおったげな。じいさん、大きなコブが出ていたそうだ。

 山へ木樵りに行って、薮に隠れていたら、天狗さんが三人ほど出て、

 天狗 天狗 メッテング
 天狗 天狗 メッテング

と踊られる。あまりおもしろいものだから、じいさんも薮の中から出て、

 天狗 天狗 メッテング
 じいをそえて ヨッテング

と踊ったら、天狗さんがたいへんに喜んで、「じい、上手だな」と言い、それから、「こりゃあ、おもしろいコブが出ちょう。コブ取ってやらあか」と、コブを取ってしまった

 すると、顔が軽くなってしまい、じいさんはとても喜んで帰って来たげな。

 隣のじいさんにもコブが出ていただ。先のじいさんの顔を見て、「おまえ、コブ、どげした」

 「山へ木樵りに行ったら、天狗さんが踊っちょらっしゃて、あんまりおもしろいもんだけん、『天狗、天狗、メッテング、じいをそろえて、ヨッテング』と踊ったら、天狗さんがコブ取ってごさっしゃった。ほんに軽うなっていいことよのう」と答えたげな。

 隣のじいさんも、それなら自分もコブを取ってもらおうと出かけたら、また天狗さんが「天狗、天狗、メッテング」と踊っておられたので、じいさんもとび出して、

 天狗 天狗 メッテング
 じいをそえて ヨッテング

と言いながら踊ったら、

「ああ、じいの踊りが上手だなあ」と言い、
「じい、コブが出ちょうなあ、もう一つやらあか」と、前のじいさんのコブを、ちょっとつけてもらったので、そのじいさんは両方のほっぺたへコブが出て、それから泣き泣き帰ったげなと

 昔こっぽし。

解説

 安部さんのお宅で語っていただいた。出雲かんべの里・民話館「むかしばなしの部屋」で、とんと昔のお話会の岡村悦子さんが語っている「コブ取り爺」の原話がこれである。聞き比べていただきたい。

 ところでこれはよく知られている話とは少しばかり違っている。大きく眺めると二カ所ばかり認められる。

 まず、歌の詞章が明らかにされている。そして天狗とじいさんの歌の詞章は少し異なる。

 いま一つの違いは隣のじいさんの踊りに対する天狗の評価が高い。天狗たちは最初のじいさんだけ
でなく、隣のじいさんに対しても、「上手だ」と誉めている。

 一般型の話では、隣のじいは踊りが下手なので、天狗も退屈して昨日のじいから預かったコブを同じ
じいと思い返すことで終わる。ここ奥出雲町の話では、隣のじいには褒美としてコブを進呈することに
なっている。

出雲かんべの里 民話の部屋 「瘤取り爺」

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