• ~旅と日々の出会い~
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83「瓜姫とアマンジャク」仁多郡奥出雲町大呂

収録・解説 酒井 董美 
語り手 安部イトさん(明治27年生)
(昭和45年7月27日収録)

あらすじ

 とんとん昔があったげな。じいさんは山へ木樵りに、ばあさんも川へ洗濯に行ったげなら、川上から瓜が流れてきたげなで、拾って食べたらたいへんにうまかったので、

 〽も、ひとつ流れりゃ
  、じいさんの土産

と言っていたら、また流れてきた。

「今日は瓜が流れてきた。持ってもどってああけにあれ食わぁや」

 瓜を包丁で切ろうとしたら、中から女の子が生まれたげな。
 じいさんやばあさんは、子どもがなかったので喜んで、瓜姫いい名につけて育てたげな。

 その娘さんが大きくなって、
  〽じいさん サイがない
   ばばさん クダがない
と機(はた)を織るようになった。

 ある日、じいさんとばあさんが、
「木樵り行くけん、瓜姫は機を織って留守番しちょれよ。何が来ても戸を開けんなよ」

 隣にアマンジャクという恐ろしい者がおって、それがやって来て、
「瓜姫さん、ここ開けてごすだわ」

 あんまりアマンジャクがせがむので、手の入るだけ開けたら、今度はアマンジャクはガラ-ッと開けて、
「あすこの柿取って食わぁやぁ」

 アマンジャクは瓜姫にぼろの着物を着せ、自分がいい着物を着て柿の木に登って自分が柿を食べては、
  〽そう そう そう 瓜姫さん   シイタン(芯)ばっかぁ
   そう そう そう
   瓜姫さん サネ(核)ばっかぁ
と、瓜姫には芯や核ばかりで、自分はよい実を食べ、瓜姫を柿の木に縛りつけ、アマンジャクは瓜姫の家に帰って戸を閉めてしまって、
  〽じいさん サイがない
   ばばさん クダがない
と機を織っていたげな。

「瓜姫や、もどったずよ」
「はい、はい、お帰りなさい」。しかし、じいさんとばあさんはアマンジャクの正体を見破った。アマンジャクも観念して、「あんな柿の木にござぁ」と答えたげな。

 じいさんとばあさんは、瓜姫を下ろしてやったげな。

 そうして、
「アマンジャク。承知せんけん」と怒ったじいさんとばあさんはアマンジャクを殺して、アマンジャクの脚はカヤの山へ投げ、それから手の方はソバ山のソバ畑へ投げたところが、アマンジャクの血が出てそれらについたので、いまでもカヤを刈ると中が赤色になって、血のような色をしています。また、ソバの脚も赤いのです。これもアマンジャクの血に染まったので、あのような赤い色になったという話だげな。

 で、昔、こっぽり。

解説

 桃太郞が男の子であるのに、瓜姫は女の子の話である。筆者が鳥上中学校に勤めていた時分、よく生徒たちと昔話をうかがいに出かけたが、この話もそのなかの一つである。

 瓜姫とアマンジャクの話は、稲田浩二『日本昔話通観』では、「むかし語り」の中の「誕生」に分類される。

出雲かんべの里 民話の部屋 「瓜姫とアマンジャク」

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