• ~旅と日々の出会い~
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第一章 物語の基本はワンパターンの「構造」

はじめに

感動し、引き込まれる小説や映画は、すべて基本となる構造で組み立てられています。もちろん、それを破壊した作品もあります。しかし、それも基本あっての異端で、いずれ本体構造に吸収されます。だからといって創作者は創意工夫を怠ることではありません。構造は踏襲しつつテーマやキャラクターの創意ともに関係を複雑にし、従来の善悪二極対峙から生き様の多様性、時代と思想を背景に価値の複合化を果たしました。それが個性と創造性ですが、ベースとなる構造は同じです。

ここでは、旅の思い出を楽しく、簡単に書き続ける方法を紹介します。小説のような創作品としての完成度や意外性ではなく、未来の貴方や友人家族が読んで感動を共有できる旅物語です。

推薦する書き方は「サンドイッチ手法」です。あわせて、ここでは駄目な事例として、オーソドックスな構造として「起承転結」と「ハリウッド脚本」を手短に紹介します。この手法は小説で活用してください。

1 サンドイッチ手法

・サンドイッチ

ビジネス界の報告書では「PREP法」といわれ、「Point(要点・結論)」→「Reason(理由・原因)」→「Example(具体例・シーン)」→「Point(要点・結論)」の流れでまとめます。

事実とスピードで報告者の意思と次の対策を報告し、情報を全員で共有するためです。それが「PREP法」です。

最初に要点(結論)を述べ、根拠・理由と対策と具体事例を示し、最後に再び結論で締めます。簡潔に、分かりやすく、報告者の意思と展開を明記する。結論で挟むから「サンドイッチ」です。

・二つの結論の違い

結論で挟む、これが味噌で大切なことです。しかし、文章でのサンドイッチは同じパンでは挟みません。

最初の結論に対し最後の結論は「next action」次の行動を明記します。結果を報告しても上司は言います、「それで」。そうです、次の対策や実行施策があっての報告です。過去の失敗より、未来への対策がビジネスの存続を決めます。

二つに自分の「意思」です。ビジネスではやり通す計画です。旅物語では「感動」です。そこに「事」(結論とnext action)の重要さが示されるのです。何を学んで未来にどのように活かすかということです。

最初の「Point(要点・結論)」→「Reason(理由)」が過去の総括ならば、最後の結論は「未来への意思」です。

ビジネスの報告書とは、過去を過去として語って終わるのではなく、未来へと繋げることでビジネスの成長、お客様との信頼の確立、市場の創造へと繋げるのです。

【ビジネス事例】

  1. 結論 
    来週金曜日の「新製品説明」のイベントは、台風の直撃が予想されます。中止すべきです。
  2. 根拠 
    天気予報で明らかのように、戦後最大規模の大型台風は日本列島を直撃、関東地方上陸が懸念されます。
  3. 事例 
    すでに航空各社、JRは運航の中止を発表しました。また参加協力店からも出店延期の相談を受けています。
  4. 結論 
    直ぐにイベント中止しを決定し、お客様や関係会社に連絡すべきです。予約した会場との検討、関係会社との打ち合わせの調整は完了し、お客様向けwebでの中止文の作成は完了しております。〇〇役員、「新製品説明」のイベント中止の判断をお願いします。

失敗やトラブルの報告、受注決定や研修報告も同様です。

・旅物語の「サンドイッチ手法」とは

旅は体験や知識だけでなく、気づかないところで考え方や生き様に影響を受けています。また素晴らしい出会いや体験が心に深く刻まれています。そんな感動や共感を、サンドイッチ手法を活用した『旅物語』で残しましょう。

短文で、感動という要点を手際よく、未来の貴方へのメッセージとし残します。

  1. 結論 得た喜び(悲しみ)、驚いたこと等、象徴的なことを30字にまとめる
  2. 理由 なぜ、よかったのかの理由。三点
  3. 根拠 具体的事例。最低三点
  4. 結論 未来へと繋げる学び。感想

・サンドイッチ手法で大切な「なぜ」(why志向)

図1を振り返ってください。

  1. 結論 過去の出来事 whatと、未来へ繋げるwhy(何が、なぜよかったか)
  2. 理由 過去の出来事  when/where/what/how(現象)
  3. 根拠 過去の出来事  when/where/what/how(現象)
  4. 結論 未来への提案  whyとhow(未来への提案と方法)

何を書こうかと悩むより、メモしたことを枡に記入しましょう。

初めの三つ①➁③は旅で過ごした過去のこと。④は①を踏まえた未来への提言です。

ただ、ここで貴方の感性が試されるのが①の「なぜ、よかったか」の問いと疑問への回答です。ここは一番大切なところです。「どうして私の事が好きなの」という質問と同じです。聞く側(読む側)は期待しますね。もちろん問われれば真剣に考えますね。

旅行物語の醍醐味は、最初の「なぜ」。なぜ感動したかの表現です。

【旅物語の事例】

  1. 結論
    6月14日、松江市の宍道湖で見た夕陽は、私を神の国へと誘ったのです。山影にかかる夕陽は、やがて一条の朱色の帯となって湖面を渡り、私の立つ水辺に辿り着きました。それは私を神の国へと招く絹の径にも思えたのです。
  2. 根拠
    夕日が美しく切ないのは当たり前です。宍道湖の山影に落ちる夕陽は美しいと、嫁ヶ島に架かる夕陽はせつないと、旅行雑誌で知っていました。でも湖面を渡る夕陽の帯はここに来て体験したのです。その光の帯を断ち切る観光船、かき混ぜていく水鳥、なによりも手ですくった水面に残像を思い浮かべることができるのです。
  3. 事例
    湖を渡る夕陽の尾をみたのは初めてでした。ここは神の国だからでしょうか。それとも昼間、小泉八雲記念館で松江を描いた『知られざる日本の面影』を読んだからでしょうか。空や山、そして海を染める夕陽は見てきましたが、湖面を渡る夕陽は初めてでした。
  4. 結論
    夕陽という自然現象。天候という運。でもそれだけではないことに気づきました。ここは神々の国・出雲なのだと。もっともっと土地の文化や歴史、ここでは出雲神話を学んでおくべきでした。そしたら、この自然の現象をもっと深く受け止めることが出来たと思います。ギリシャ人の小泉八雲が松江を愛した理由が、なんとなく理解できた夕陽でした。

2 参考・小説のつかみと「起承転結」手法(水戸黄門)

起承転結の例としてとりあげられるのが次の文です。

「京都三条糸屋の娘(起)、姉は18妹は15(承)、戦国大名弓矢で殺す(転)、糸屋の娘は目で殺す(結)」

小説は基本この構造です。そして読者も深層心理の中でこの構造を描いています。テレビドラマの百パーセントはこの形態で、典型的なのが『水戸黄門』など時代劇です。

【水戸黄門】

水戸黄門一行は旅先の真面目で正直な二人に出会います。夢を持って質素に頑張っている二人、そこに悪代官と越後屋が現れ娘を誘拐、苦界の日々。そこに現れるのがちりめん問屋の老人一行。舐めてかかる悪代官。ところが示されたのは葵の紋所、「先の副将軍・水戸光圀校であられるぞ」となって平和と安寧がおとずれる。

時代や登場人物が変わっても構造は同じです。

3 参考・映画のドキドキと「ハリウッド脚本」(AKBの挨拶)

ハリウッド映画は、ほとんどが次のような構成になっています。人間関係が複雑になり、価値観が多様化していますが、整理すれば次の図です。

ハピーエンドの映画「ビューティフルウーマン」でも、半ハピーエンドの「卒業」でも、敗れ去る「イージーライダー」でも同じです。

この構造を真似たのが、AKBの総選挙後の挨拶です。高位に選ばれたメンバーは壇上に上がり歓喜に包まれながら一様に上手なスピーチをします。それが次のような構成です。

【AKB挨拶】

  1. 夢(目標) 
    私は小さいころからダンスやピアノを学んできました。AKBで活躍することがずっと夢でした。
  2. 挫折 
    でも、私より仲間の皆がずっと上手で奇麗でした。失望した時、過労で休んでしまい、もうやめようと思いました。
  3. 仲間 
    そんなとき、先輩の花子さんに呼び出され屋上に行ったのです。そこで練習している仲間を見ました。先輩は、皆、必死に努力をしているのよと教えてくれました。
  4. 夢の実現、そして未来へ 
    それを励みに私も頑張りました。ファン皆さんの声援や仲間のアドバイを得て頑張れました。ありがとうございます。これからも今日を励みにもっともっと皆様を楽しくできるよう頑張っていきます。

これが夢と挫折、出会いと努力、そして感動の結末へのストーリーです。

両方とも小説や映画のように長編となれば面白くなりますが、旅物語には不向き
サンドイッチ手法で旅物語を書いてみませんか。今後、島根国でも募集する計画です。

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