• ~旅と日々の出会い~
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『VIVANT』(TBSドラマ)の里を訪ねる木次線の旅

―思い出づくりではなく、これからを考えるために―

匿名希望     


■知らぬは私だけ

TBSドラマ『VIVANT』(ヴィヴァン)シリーズ2がこの夏はじまることで、我が家が、共通の目標をもったのが春の連休明けのことです。

『島根国』の主催者の先輩から、『VIVANT』の謎の男・乃木憂助(堺雅人)の出生の地が島根県の奥出雲町、たたら製鉄の御三家のひとつ櫻井家であることを聞かされ、朝食時に「受け売り」の蘊蓄(うんちく)を家族に話しました。
ところが、大学生の娘から「小ばか」にする微笑返し、高校生の息子は露骨に「なにをいさまさら」とシカトされたのです。(私以外、家族は『VIVANT』のファンでした)

娘も息子もネット配信で常に鑑賞。櫻井家のことも私以上に熟知しておりました。それにネット検索で『島根国』にたどりつき、YouTubeを見、櫻井家を紹介した『地方創生の活動』や『文化産業遺産 たたら製鉄』など、熟読しております。

パートナーの実家は松江市、古文書解読が趣味で『島根国』の『郷土史【奥出雲】と郷土研究の思い』の一部をプリントアウトしてファイル化し、「出雲國」を勉強しております。

「頂いた名刺をワイシャツのポケットに入れっぱなしにするなんて最低です」と、『島根国』の名刺のQRコードから拝読していたようです。(誠に申し訳ありません。頂いた名刺をぞんざいに扱い)

「そういうところが、ダメだよ」と子供に説教をされました。「典型的な口先だけの団塊ジュニア世代の特徴ね」と社会学専攻の娘の分析。「控えめなところが、素敵なのよ」と、パートナーが間に入らなければ拗ねてしまうところでした(笑い)。

■「そうだ、島根に行こう」

JR東海のCMを見ながらパートナーが「そうだ、島根に行こう」とつぶやきました。「両親のお墓まいりを兼ねて」と、先ほどのフォローのお返しに賛成します。

鉄道ファンの息子から「木次線の一部廃線とスイッチバック」、娘からは「石見銀山発見五百年」の提案。久々に感じる家族の一体感です。

その夜帰宅すると、リビングのテーブルは島根の観光パンフレットや旅行雑誌と書籍、それに書きなぐりのメモで溢れていました。娘言わく「ブレーンストーミングをした」とのことです。

■王道の出雲地方旅行

ほろ酔い気分の私は、そんな彼らの話し合いを無視するように発言をしたのです。

『朝一の飛行機で出雲空港。レンタカーで「石見銀山」と「大森の町」を観光。あわせて群言堂と中村ブレイスを訪ねる。レンタカーで「玉造温泉」で一泊。二日目は、宍道から「木次線」。私はひとりレンタカーで移動。「出雲横田」駅で私も木次線に乗り、備後落合まで行きスイッチバックを堪能。帰りは「出雲横田」駅で下車し、「奥出雲たたらと刀剣館」、「絲原記念館」「櫻井家・可部屋集成館」と「世界農業遺産」の棚田など『VIVANT』コース。宿泊は「奥出雲」の「百姓塾」か「玉姫山荘」。三日目は農道をつかって「金屋子神社」から「安来」の「足立美術館」鑑賞を経て、「松江」に入り「神魂神社」や「八重垣神社」に「県立美術館」。松江泊。四日目は、「松江城」や「武家屋敷」の見学後、「出雲大社」と「日御碕」を経て出雲空港から帰京』

盛りだくさんの効率的な計画を自信たっぷりに提案しました。完璧なプレゼンテーション。ところが場はしらけ切っています。

「『島根国』の人の案でしょ」。「自分で調べてないの」。「それでもいいでしょ。聞くことも調べることと同じよ」とパートナーのフォロー。

■なぜ行くのかを考える

パートナーと二人になると指摘されました、「大切なことは、計画の完璧性ではなく、貴方の思いと熱量よ」。パートナーは続けます、「六年間も毎週更新する島根国。内容が楽しいだけでなく、続ける思いが伝わるから読む人もいるのよ。貴方は読まないのに、旅行の工程だけはきくのね。その温度差に子供たちは気づいたのよ。結果しか考えない貴方に」

今回の旅行は、「家族の思い出づくりではない」とパートナーは言います。「子供も大きくなった、それぞれが何を考え、何を見つけるかが大切でしょうと。もちろん、私たちも」

離婚の危機がありました。子供が自立したら一人になりたいと提案されたのは数年前のこと。そのとき「ママ」や「家内」ではなく、「パートナー」と呼んでと提案されたのです。名称の変更ぐらいに考えていました。あらためて考えました。そうではない、彼女の主体性=自立の獲得であったのです。

計画を変更します。レンタカーで奥出雲地方に向かう、あとはそれぞれが考えようと。その結果、運転手だけで終わり、めいめいのひとり旅になるかもしれません。それでもいいでしょう。みんな自立した大人です。そしてなによりも私が、家族として自立しなくてはならないと考えました。

みんな頑張ってきたと思っています。私も頑張ってきたつもりです。木次線も頑張ってきました。それでも一部廃線の計画が進んでいます。継続を求める活動も続きます。『島根国』を読んでわかりました。木次線に限らず、いろいろな活動が行われていることを。そして後期高齢者になる先輩もその一人。

『団塊ジュニア』、嫌だった。なんか小ばかにされたような言い方に。そして親たちの世代が嫌でした。なんでもかんでも自分たちが築いてきたような言い方や傲慢な態度に。OB会も会社の中でも無意識に嫌悪していました。その反発が、「否定」だったかもしれません。団塊の世代を拒否する。しかし、それでは私の何も変わらない。

パートナーも、子供たちは違った。相手を認めたうえで、相手と自分の生き方や考え方を考えています。

■8月の出発

先輩に正直に話しました。「それに気づいたこと。それだけで君は問題の半分以上を解決したのだよ」。「主体性とは、そのことだよ」「相手を変えるより自分が変わる」「何事にも当事者意識をもって考える」。先輩らしい上段の構えでまとめられました。(数日前までは、これが嫌いだった)

「旅」のコースの大まかなところは皆で行くことにしました。宿も同じところを予約します。しかし、現地の行動は成り行きにしました。ただ、先輩に教えられた『飲み屋』と『食堂』と『喫茶店』、そして先輩が通った高校には、みんなで行くことにします。それは『島根国』に家族が興味をもっているからです。なぜ、『島根国』を【つづける】のか、それをそれぞれが見つけるためです。

忘れていましたが『VIVANT』で伝えたいことも同じ気がします、『原点』。出生の秘密が奥出雲にあるように、ドラマで伝えたいことは『奥出雲』の良さではないかと思います。福澤克雄の狙いもそこにあるような気がします。そうでなければ、あんなに奥出雲こだわる必要はないと感じました(シーズン1とシーズン2の一回目の放送)。そういえば福澤克維はテレビドラマ『砂の器』もプロデュースしているのですね。

■自分を見つめる

かつて「自分発見の旅」というフレーズが使われました。そんな高尚な旅ではありません。でも、『VIVANT』と『島根国』と『先輩』のお陰で、結果はどうか分かりませんが、何らかの形で絆を保つ何かが発見、あるいは気づくことができるかもしれません。

それは木次線が、なぜ存続しなければならないかの問いと解に似ていると思います。
暑い夏、島根で汗をかいてきます。いつか家族がバラバラになっても、何かで結びついているための努力だと思います。

その約束として原稿を書かせて頂きました。もしかしたら先輩の、団塊の世代の巧妙な罠にまんまんとまったかもしれません。でも、それでも良いと思っています。自分を見つける一歩を踏み出したのだから。

おしまいに、申し訳ありません。木次線の思い出話でも、『VIVANT』の話題でもなく、これからの生き方の話になったことに。

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