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十四回 新宿、恋には水をささぬ縁結び「出雲大社新宿」「恋弁天」

今回紹介する「出雲の神々」は、これまでのような古代・中世に建立された神社ではなく、近年、建立された祠です

新宿西口高層ビル群

新宿西口には多くの高層ビルが建ち並んでいます。東京都庁、パークハイアット東京、ハイアット、住友ビル、三井ビル等々。2029年には小田急と東京メトロによる260メートルの高層ビルが建設されます。早くに建てられたのが京王プラザホテルと住友ビルです。パークハイアットが建つ前には、東京ガスの丸いガスタンクがありました。西岸良平の『三丁目の夕日』の景色を思い出します。
かつて一帯は貯水池で、突き当りにの新宿中央公園の奥に、コーナーでも紹介しました「十二社熊野神社」があります。

住友ビルは1971年に着工、74年に竣工しました。今の外観からは想像できませんが、三角柱の形状から「三角ビル」とも呼ばれました。また地震に強い竹筒構造で、中心部分が吹き抜けです。来館した方は吹き抜けのポイントから必ず天井を見上げていました。最上階のレストランから夜景を見ながら食事をする親子や恋人も多く見かけました。
建物の老朽化から2017年に改修工事に入り、2020年に開業しました。

今回、紹介する祠と神様は、この新宿住友ビルの敷地内にいらっしゃいます出雲大社と恋弁天です。

水を基調とした憩いの空間

新宿駅西口から伸びる中央通りに面した新宿住友ビルの敷地内に、出雲大社新宿と恋弁天は向かい合う位置でお祀りされています。改装工事前と今では、場所は同じですが配置は異なります。

最初に祀られたのが「恋弁天」で、ビルが完成した1973(昭和48年)です。製作は彫刻家の流政之氏で、時流に合ったモダンなモニュメントでした。時代は大阪万博も終わり(岡本太郎・太陽の塔)、サイケデリックやロックが流行っていました。
お参りすると恋が叶うと噂となり、1996(平成8年)に、出雲大社の御払いを受けて「出雲大社の社」も祀られました。
煉瓦造りの壁面を背に、古代と近世、そして現代の調和した時空でした。

恋に水をささぬ「恋弁天」

『全国の出雲の神々』の『十二社熊野神社』でも紹介しましたが。江戸時代、この辺りは湖沼地帯でした。明治から昭和にかけて、水道局の浄水場が設置されました。昭和48年に新宿住友ビルの創業時、新宿に来る人々にとって憩いの泉となるようにと、モニュメントとして恋弁天が設置されました。
高層ビル地域は新宿中央公園の白糸の滝やナイアガラの滝をはじめ、三井ビルの憩いの広場の池、新宿センタービルの水の広場など、水を感じるものが設置されています。
七福神の一柱である弁天様は、水の神様として信仰されてきました。ここの恋弁天には次の碑があります。
「恋はみずもの水あれば、心は狂い花が咲く、その昔よりこの地は、沼や池水ゆたかなる里、水をもとめてひとあつまり、さかえしたという、いらい弁天をおき水をまつる、ゆえに新宿の弁天たちは、恋には水をささぬとの伝え」

恋弁天
幸せと安心、「出雲大社」

恋弁天に願うと恋が叶うと噂がひろまりました。平成8年、縁結びの神様の出雲大社(東京分祓)の神官によって「神恩報謝修祓式」が行われ、出雲の神様による良縁の霊験を授かったのです。それ以来、出雲大社に参拝した同じご利益を受けることが出来ます。

「新宿住友ビル出雲大社」の御祭神は、大国主大神(おおにぬしのおおかみ)と、龍蛇神(りゅうじゃじん)の二柱です。
大国主大神は、国造りの神様で、縁結びの神様としても知られています。みなさまの幸せを司る神様です。
龍蛇神は、全国の八百万(やおよろず)の神様が出雲に集まりになる神在月に、先導役をされる御使神です。水に住む龍は水難除け、地に住む蛇は災難除けの守護神です。

「この二柱の神様により、この土地の安全と、ここに働き、集う皆様の幸せのご縁を結んで頂いています」(『御由緒』より)

新宿の街

古い街並みだけでなく、新しく生まれた近代ビル群のなかにも、「新宿の歴史」が刻まれているのです。変わらぬ大切なものを教えてくれたモニュメントと祠でした。
神様も神社の中だけでなくいろんな所にいらっしゃいます。

出雲大社新宿と恋弁天
大国主大神、龍蛇神
東京都新宿区西新宿2-6-1 新宿住友ビル
最寄り駅 地下鉄都営大江戸線「都庁前」。JR「新宿駅」。

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