• ~旅と日々の出会い~
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二回 戦後の時代を刻んだ芸術と漫画の街にある「長崎神社」(東京都豊島区)

長崎神社

池袋から西武池袋線の各駅停車で一つ目、「椎名町」駅から歩いて三分ほどのところに『長崎神社』があります。祀ってある神様は、『出雲神話と神々』で紹介しましたヤマタノオロチを退治した須佐之男命(スサノヲ)と櫛名田比売命(クシナダヒメ)です。建立されたのがいつかは不明です。

元々は旧長崎村の鎮守として櫛名田比売命を祀ってきました。江戸中期に現在でも隣接している金剛院が再建され別当寺となります。明治の神仏分離令で金剛寺を分離して大宮の氷川神社の分霊を勧請、氷川神社と名乗っていた頃もあります。その後、櫛名田比売命の夫に当たる須佐之男命も合祀し、今の長崎神社となりました。

長崎神社の9月の大祭

9月中旬に開催される長崎神社の大祭では多くの夜店が出ます。境内だけでなく、駅前の道にもびっしりと並び、それはそれは盛大です。また神楽殿では里神楽などが奉納されます。見ることもできます。また夜には神輿も繰り出し、賑やかで元気な祭りになります。周辺の町でも子供神輿が出、いまでも長崎村あげての祭典です。

金剛寺

さて椎名町と言えば売れる前の漫画家たちが暮らしていた「トキワ荘」が有名です。それにちなんで金剛寺の境内には「マンガ地蔵」というペンをもったお地蔵さんがあります。あわせてご参拝ください。なお、入り口右横には明るい喫茶店もあります。

トキワ荘物語と図書館

・トキワ荘。長崎神社から歩いて十数分のところに漫画家たちが暮らしていた「トキワ荘」があります。1960年代、手塚治虫、寺田ヒロオ、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、水野英子など後に漫画界の巨匠となる若き漫画家たちが過ごしていました。また島根県の松江市に生まれた園山俊二もあしげく通っていました。現在は近くに「トキワ荘マンガミュージアム」として復元されています。また藤子不二雄や赤塚不二夫の漫画にも登場する中華料理「松葉」は現在もあります。ラーメンライスは漫画家を目指す若者のみならず一度は口にしてほしい食事です。

・豊島区の図書館には漫画が充実。トキワ荘の漫画家たちで忘れがちですが、忍者ブームを生んだ『伊賀の影丸』や『三国志』を描いた横山光輝も隣の要町に暮らしていました。そのためでしょうか、有楽町線の東池袋駅にある豊島区中央図書館には手塚治虫たちの漫画が充実し、千川駅にある千早図書館には横山光輝の漫画が充実しています。なお、大半は貸出禁で、館内のみの閲覧です。

西部池袋線「椎名町」駅階段
日本のモンマルトルの丘「芸術家村」と池袋の闇市

戦後まもなくのことです、絵や彫刻を学ぶ学生や芸術家の卵が集まって「アトリエ村」が自然発生的に形成されました。みんな貧しく食うものにも困るなか技術と感性を磨きました。いまでも貧しい芸術家がアルバイトをした店が残っています。まさに、パリのモンマルトルの丘(?)です。

また戦後の池袋駅は新宿や新橋と並ぶ闇市の多い街でした。まさにハングリーの街でした。多くの小説に取り上げられていますので、闇市については皆さんでお探しください。

アトリエ村
飲み屋

さて椎名町の駅周辺には面白くて美味しい飲み屋さんが沢山あります。池袋で飲んだ後、仕上げで飲むとサラリーマンというより、この街に長く住んでいる方も多く、隣り合わせになると、この街に大きな工場があった頃の話などセピア色の戦後史を聞くことができます。

東長崎寄りの踏切から続く通称「焼きトン通り」。ほんとうに焼きトンの多い街です。お薦めの店が何軒かありますが、ここは皆様訪ね探してください。意外なお寿司屋さん、有名ホテルのコック長の和食屋、地元の人で満員の居酒屋などなど、呑み助には楽しい街です。

また駅を出た正面にある立ち食いうどんの「南天本店」の肉うどんもおすすめです。私はキャベツうどんが好きです。

長崎神社 須佐之男命(スサノヲ)と櫛名田比売命(クシナダヒメ)
東京都豊島区長崎1-9-4
最寄り駅 西武池袋線「椎名町」

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