-スイッチバックのジオラマが東京・神保町に-
東京・神保町・学士会館の近所「TOBICHI」にて、JR木次線(島根県)・出雲坂根駅と三井野原駅を結ぶスイッチバックのジオラマと周辺の鉄道を紹介した鉄道漫画等が展示されています。(奥出雲のショップも併設)
鉄道ファンの皆様、かつて「青春18キップ」で訪ねた方、さらには夜行急行『ちどり』で広島へと向かった方、そして島根に興味のある方、ご家族でお出かけください。できることなら、廃線が噂される木次線に関心を寄せ、奥出雲を訪れていただけたら幸せです。
『出発進行ー!ジオラマと鉄道マンガ展 がんばれ! 山を登る列車・木次線』
期間・2023年7月14日(金)〜2023年8月13日(日)
場所・東京の神保町「TOBICHI」(JR御茶ノ水駅、地下鉄三田線・神保町から10分程)
時間・11:00〜19:00(※7/31はお休み)
JR木次線・出雲坂根(奥出雲町)駅とスイッチバックのジオラマは、横3メートル60センチ×縦90センチ、実物の150分の1スケールです。ジオラマのなかを列車が走ります。実際に列車に乗れば見られないスイッチバックの全景を、ここでは楽しむことが出来ます。
精巧なジオラマに、初めてスイッチバックの山々の全景を知り、遠い昔に遠足で汽車に乗ったことや三井野原スキーに出かけたことを思い出しました。(三井野原駅はスキー場の中にあり、ホームからゲレンデに滑って行けた)
かつて奥出雲は豪雪地帯で年末に降る雪が根雪となりました。昭和38年の38(サンパチ)豪雪の折は、木次線が雪崩で閉ざされ自衛隊のヘリコプターで支援物資が運搬されました。そんな豪雪の中国山地をラッセル車とともに石炭をくべた汽車は、三井野原スキー場に向かう客を乗せ力強く走るのでした。
人や荷物や物資を、材木や牛や砂鉄を運んだ汽車は、やがて気動車へと替わり、軽量化された列車が昇り降りするのです。広島と松江を繋ぐ夜行急行「ちどり」は夜中の一時過ぎ、切ない音を響かせてスイッチバックを昇ります。
1960年代の高度成長期、中学を卒業すると関西に就職する友を出雲横田駅から三井野原駅まで見送りました。何も話さぬ友と見たスイッチバックは険しくて、列車を見送った三井野原の高原は果てしなく虚しく、進学する私はスイッチバックのわき道を走り下ったのです。出会いもあれば別れもある駅と列車と線路。スイッチバックはそんな折り返し。
今年の夏、ラストランとなるトロッコ列車『オロチ号』、赤字路線の救世主として活躍しました。都会に暮らす孫会いたさに、祖父が指定キップ買い求め、「帰ってこんか」と願うのです。
心に染付いた木次線の思い出をジオラマは刺激したのです。もう一度こいよと、残してほしいと、木次線は呟くのです。
なぜ、ジオラマに、それほどまでに震撼されたのでしょうか?
■制作者は?
ジオラマ制作者の江上英樹さんは、沢山の漫画作品と作家を生み出した小学館のマンガ編集者でした。『東京ラブストリー』『美味しんぼ』など連載した『ビッグコミックスピリッツ』を担当、『IKKI(イッキ)』では編集長として活躍されました。担当された漫画では『伝染るんです。』(吉田戦車)、『サルでも描けるまんが教室』(竹熊健太郎・相原コージ)、『月下の棋士』(能條純一)。私が好きな漫画です。
一方、大の鉄道ファンで、急勾配を走るスイッチバックが好きで、今回のジオラマ作成に繋がったのです。
ジオラマを前にして共感を覚えたのは、江上英樹さんの「好きだ」「創る」という思いの先にある営為としての「生き様」でした。
ジオラマを制作するために奥出雲の横田に半年暮らし、足を運んでは事細かく観察し、つくり上げていくのです。詳細は今後取材させて頂きますが、「好き」という領域だけでなく、存在に「こだわる」姿勢から、木次線の存続を願う強い意思とメッセージを感じたのです。
2020年7月、江上英樹さんが「物がたりと物づくり」をコンセプトに設立された『部活』の活動のひとつでしょう。
ジオラマ展には、江上英樹さんと仲間たちの「物づくり」の技が尽くされています。
スイッチバックの「く」字線路や美味しい水場を想像させる駅舎だけでなく、民家に道路に山肌の細かいところまでリアルに作り込まれています。それは劇画漫画の石ノ森章太郎やつげ義春、宮谷一彦の作品を彷彿させます。
そして、言葉には表されていませんが、「物がたり」をどのように創るか、なぜ創るのかの熱い思いがあります。太文字では表記されてはいませんが、「木次線を残したい」というメッセージが江上英樹さんから伝わります。
鉄道ファンとして、漫画好きとして、あるいは奥出雲ファンとして楽しみ、そして、ここまでほれ込んだ江上英樹さんと仲間たちの思いを感じてほしいと思います。
ジオラマとともに鉄道漫画の原画や作品、奥出雲の品々も販売しています。開催期間も僅かです。早めにお出かけください。
『出発進行ー!ジオラマと鉄道マンガ展 がんばれ! 山を登る列車・木次線』
詳細は、こちらをご覧ください
HOBONICHI の TOBICHI – ほぼ日刊イトイ新聞 (1101.com)
■会場 TOBICHI ・東京都千代田区神田錦町3-18 ほぼ日神田ビル1F ・11:00~19:00 お休み 不定休 ・電話 03-5422-3805 ■TOBICHI URL https://www.1101.com/tobichi/tokyo/index.html 会場の『TOBICHI』の売店にある手帳がお薦めです。
スイッチバック大全: 日本の“折り返し停車場” 江上 英樹/栗原 景▼
明治の津和野人たち:幕末・維新を生き延びた小藩の物語 山岡 浩二▼
時代屋の女房 怪談篇 村松 友視▼
あの頃映画 「時代屋の女房」 [DVD] ▼
『砂の器』と木次線 村田 英治▼
砂の器 デジタルリマスター 2005 [DVD] ▼
砂の器(上)(新潮文庫) 松本 清張▼
フジテレビ開局60周年特別企画「砂の器」オリジナルサウンドトラック▼
出雲国風土記: 校訂・注釈編 島根県古代文化センター▼
小泉八雲 日本の面影 池田 雅之▼
ヘルンとセツ 田渕 久美子▼
かくも甘き果実 モニク・トゥルン (著), 吉田 恭子 (翻訳)▼
出雲人~新装版~ 藤岡 大拙▼
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