― はじめに ―
文章を書くのが苦手、でも、旅の思い出を形にして伝えたいと思っている貴方に、短時間で簡単に書ける方法をお伝えします。ビジネス報告書で使用する『サンドイッチ手法』です。
旅の思い出を①要領よく、➁感動的に、③今の気持を色醒めることなく書き留めましょう。描きとめた創作品を『旅物語』と名付けます。
情報の共有と意思決定の迅速を重んじるビジネスの世界では、結論の見えないだらだらした文章は否定されます。大切なことは、まず結論を述べ、現象や原因・対策を説明して再度次の行動を明記した結論で閉じる報告が求められます。このように結論で挟むことから『サンドイッチ手法』と呼ばれています。
この方法を使うと旅の思い出のポイントを押さえ、手短に書くことが出来ます。またフォーマット化されているので旅物語の「短編」集として後々読むのにも便利です。
「島根の旅どうだった」「楽しかったよ」。こんな会話をよく聞きますね。でも相手がききたいことは、「どうして」楽しかったです。もちろん貴方の旅物語を読む未来の貴方も同じです。行ったことや起きた事の羅列ではなく、なぜここを選んだの、体験した貴方がなぜ感動したかのその「心」です。
・ソクラテス (無知の知)
紀元前三百年、日本という国の形もない弥生時代、ギリシャの国でのことです。ソクラテスという偉大な哲学者がいました。当時の哲学者は街頭で自分の考えを主張し、相手を論破することで賢くて偉いことを立証したのです。例えば物は何でできているかとか。そんな哲学者たちにソクラテスは言ったのです、「知っていることを自慢するのではなく、知らないことに気づきなさい」と。「無知の知」です。
ギリシャが特殊な時代ではありません。今の日本にも沢山いますね。自分は何でも知っている、賢いと自慢している人が。ソクラテスやプラトンに言わせれば、おバカな人で、無知な人たちです。傲慢で、見栄っ張りで、独りよがりの人です。
大切なことは、常に知らないことが沢山あることを自覚して、無知であることに「気づく」力です。
・考え抜く習慣(思考力)
こんなことが、どうして旅物語を書くことに必要なことかと思いますね。もしかして必要ないかもしれません。
ただ、私たちには知らないことが沢山あり、知らないことを調べるとともに、知らないという事実を常に意識し続けることで、すこしずつ視野が広がり、考え方が深まっていくのです。旅先で遭遇した出来事、出会った人、そんなことに驚き、感動する。その驚きと感度はどうしてかなと考えてみると、日常では気づかなかった自分について、あるいは思いもしなかった考えに出会うことがあります。それが「思考力」です。
完全な旅物語など誰も書けません。それでいいのです。完全な旅物語など、もしかしたら面白くないかもしれません。幾つかの宿題を残しつつも疑問形でもかまいません、記述しておきましょう。疑問(なぜと考えるwhy志向)が貴方にとって、とっても大切なことです。
・疑問に思う (なぜなぜ思考)
旅先は未知で不思議なことだらけです。そんな知らないことに出会い、関心をもち、知る喜びとともに感動を覚える。それを貴方の言葉で記録します。それが「知らないことを知る」第一歩です。
折角の旅先での感動、大切にしましょう。そのひとつが旅物語として文章に起こすことです。もちろん写真も、記念品の収集も大切なことですが、感動を「思考する」ことは、未来の貴方にもっと多くの喜びを残すことになると確信します。
島根に暮らす人と島根を旅する人が出会い、そこに生まれる喜びを言葉にして残しましょう。もちろん島根以外の旅でも。
・目次
全体の流れは次のようになっています。すべて読む必要はありません。「サンドイッチ手法」だけを読み、あとは必要に応じてご覧ください。
【目次】
はじめに なぜなぜ思考と「無知の知」
一章 小説も映画も基本はワンパターンの「構造主義」
1 サンドイッチ手法とは(フォーマット付き)
2 小説のつかみと「起承転結」手法(水戸黄門)
3 映画のドキドキと「ハリウッド脚本」(AKBの挨拶)
二章 書く前のひとり雑談
1 準備と環境 5W1H(6W3H)
2 ひとりブレーンストーミング
3 ヘッドコピーをつくる(これで貴方もコピーライター)
4 メモを取る考える
三章 技術を磨く、自分を知る
1 未来の貴方が読みたい旅物語とは
2 基本は5W1Hから
3 過去のWと未来のWとH
4 抽象化と具体化の使い分け
四章 実習編
1 町を散策しよう
2 旅物語
・概要の整理
書く前に情報を整理しましょう。
新聞記事が5W1H(ここでは6W3H)でできているように、ビジネスの報告書も同じです。もちろん旅の思い出の整理にも大切なことです。ます、次の図(図1)をつかって整理します。箇条書きで十分です。
次に、この枡が過去と未来に分かれることに注意しましょう。いわゆる結論と証明、サンドイッチ手法でいえば、パンと具に分かれる要素です。
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