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十回 全国の神様は「出雲の国」を目指す

『神在月』と『神無月』

神在月と神無月、その関係を知っていますか?

島根では当たり前の「神在月」ですが、全国的にはどうでしょうか。首を傾げる若い人に、「出雲大社」、「神様の密議」、「縁結び」と飛び石のようにつなげて話すと、意外にご理解いただけます。

当サイト『島根国』で紹介しているアニメ『神在月のこども』が只今上映中です。

「神在月」を題材に、「島国の根」と書く神話の地「島根・出雲」を目指して駆ける少女の成長を描く劇場オリジナルアニメです。是非、ご覧になって下さい。

『神在月のこども』

そこで、神在月について少しだけですが紹介します。

行われる儀式はすべて神事です。一般の人の見学を禁止しているものも多々ありますので、事前に自治体や関係団体のサイトでご確認ください。また、エンターテインメント的なイベントでもありません。鑑賞には関係者の指示に従ってください。

なお、出雲大社に隣接する「古代出雲歴史博物館」内には祭事が上映されています。あわせてご覧ください。入場料あり。

神在月とは

「1月」「2月」「3月」はグレゴリオ暦です。旧暦の和風の月の呼び方では、ちょいと長いのですが、「睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走」です。憶え方は七五調で、「むつきさやよい、うづさつき、みなふみはずき、ながかんしし」。

島根の学校では、国語や古文の授業の際、教員は必ず言います。「日本各地は神無月きだが、出雲では神在月だ」。「それは全国の神々が出雲に集まり、来年の縁を結ぶ会議を行う」と。定番です。へそ曲がりの私は、テストで「神無月」と書いたら『△』を頂きました。まあ、点数には影響していませでした。

どんな儀式

全国から神々が集まる各神社では、「神迎祭(かみむかえさい)」に始まり、「神在祭(かみありさい)」、そして神々をお見送りする「神等去出祭(からさでさい)」に大きく分けることができます。

今年も、11月14日(旧暦10月10日)から神迎祭が始まります。

出雲大社
なぜ出雲で、何をするの

全国の神々が出雲に集まる伝承は、平安時代末の『奥義抄』などに記されています。では、なぜ出雲で、なんのために集まるのでしょうか。
『古事記』に掲載された「国譲り神話」です。
オオクニヌシがアマテラスの使者に力で負け、「私の治めている葦原の中つ国の政事(まつりごと)は、アマテラスがお治めください。私は退いて神事を治めます」と、せっかく統合した葦原の中つ国を譲ったのです。これが「出雲神話」の「国譲り神話むです。(当サイトでは、三浦祐之氏の「出雲制圧神話」としてとらえています。詳細は『出雲神話』のコーナーをご覧ください)

この「神事」が縁結びの集まりと言われています。集まりのために全国から神々をお迎えする信仰が生まれたといわれています。

倉時代の出雲大社神殿の模型
留守神もいる

出雲にすべての神様が行くわけにはいきません。留守を守る「留守神」という神様もいるようです。また伊勢神宮の神様は、そのまま伊勢にいらっしゃるということです。

八百万の神様となれば、大変な数です。『古事記』や『日本書紀』に記載された神様だけでなく、民間宗教の神様や道祖伸もいるわけですから。上空を飛んでくるのでしょうか。安来市の島には、神様が一時休憩されるところがあります。まるで渡り鳥みたいですね。まあ、鳥の神様もいるわけですから。

神在月の時期は、出雲市や松江市のホテルや旅館は予約で満室です。昨年と今年はコロナウイルスの感染で、控えられる方も多いかと思いますが、それでも宿泊は厳しいのではないのでしょうか。

このさい他の名所旧跡の見学や自然文化の散策を兼ねて、他の市町村で宿泊するのも良い考えだと思います。是非、ご検討ください。

大宮氷川神社
神在祭について
  • 神迎神事・神迎祭 11月14日(旧暦10月10日)

稲佐の浜で御神火を焚き神々を迎えます。その後、浜から出雲大社への「神迎の道」を進みます。出雲大社の神楽殿で「神迎祭」が行われ、終わると神々は旅社の十九社に入ります。

稲佐の浜
  • 神在祭 11月15日、19日、21日(旧暦10月11日、15日、17日

神々は7日間、出雲の地で神事を行います。縁結びの会議ですね。
この期間、大社の人々は、神々の会議や宿泊の邪魔にならないようにと、静粛に過ごします。旅で来られた方にもお願いします。

  • 縁結大祭 11月19日、21日(旧暦10月15日、17日)

オオクニヌシをはじめ全国から来られた八百万の神々に対し、人々の縁結びを祈る祝詞が奏上されます。

  • 神等去出祭 11月21日、30日(旧暦10月17日、26日)

出雲大社境内の十九社にある神籬が拝殿に移動されます。神官が本殿楼門に向かい、門の扉を三度叩き、「お立ち~、お立ち~」と唱えます。神々は出雲大社を去られ、それぞれのお国へと帰られます。

(※なお、神事の日程、および注意事項は、自治体、関係する団体でご確認ください)


神在月に関係する神社

「神在祭」に関係する神事は次の神社で行われています。すべて神社ですべての神事が行われるのではありませんので、ご注意ください。

出雲大社、万九千神社、日御碕神社、朝山神社、神原神社、売豆紀神社、多賀神社、神魂神社、佐太神社です。

神魂神社
気持

子供の頃、奥出雲の山の中で暮らした私は、残念ですが「神事」を見たことはありません。もしかすると氏子であった神社の神様も出雲大社へと出掛けられたかもしれません。そうすると、テストで「神無月」と書いたのも、あながち不正解とはいえないかもしれません。

まあ、あまり厳密なことは考えず、この時期、恋愛、結婚、再婚のエトセトラの人は、自分の出会いはどうであったか、パートナーを大切にし、会話があるのかを顧みて、いまだパートナーの見つからない、あるいは破局した貴方は、次を期待して自分磨きの時をお過ごしください。

島根にいるからと、必ずしも良縁であるわけではございません。最後はご自分の努力と意識の変革かと存じます。神様にはお願いでなく、感謝を伝えたほうが良いのではと私は思います。何事も感謝の気持ちで。

さて、当社にいます「優しい貧乏神」と「気の弱い勝利の神」を、先ほど見送ったところです。

古事記

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