-素戔嗚尊・八束瑞夫・大国主命・事代主神、揃い踏み-
ご縁もあれば、つながりもあります。この頃、やたらと耳にする交流を大切にした「コミュニケーション」。当サイト『島根国』のコンセプトでもあります。そして何かが起きると叫ばれる「絆」。大切なことです。ひとりの力でなく、皆の力で。
強い絆を表し、そのためのコミュニケーション(言葉だけでなく行動や姿勢も含む)の大切を示すのが、次の言葉です。
「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」(one for all ,all for one)
アレクサンドル・デュマ『三銃士』で、ダルタニャンと三銃士たちが友情を誓う際に叫ぶ言葉です。日本ラグビーのキャッチフレーズにもなっています。
名所旧跡を訪ねるときも、脈絡もなく訪ね行くのも偶然の出会いがあって楽しいものですが、なにか因果や関連をもって二つ以上の名所旧跡を訪ねるのも楽しい旅です。
今回は、そんな流れ、結びつきの神社と神話を紹介します。「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」
・出雲神話の「ダルタニャンと三銃士」
ここで述べることもなく、『古事記』や『出雲國風土記』に登場する出雲神話は、アレクサンドル・デュマ『三銃士』よりずっと古い作品です。百も承知乃介です(オヤジギャグ)。ここはこじつけたユニークな話として読んでください。
たとえば、ダルタニャンは素戔嗚尊(須佐之男命・すさのおうのこみと)、三銃士は素戔嗚尊の子神(子孫神)となる八束水臣津野命(やつかみずおみつのみこと)、そして大国主命(おおくにぬしのみこと)と事代主命(ことしろぬしのみこと)の親子神でしょうか。
・出雲神話の旅
さてさて、そんな『出雲神話・三銃士』の旅に出かけましょう。
そのまえに場所の確認をしておきましょう。
・素戔嗚尊(須佐之男命)は、高天ヶ原から降臨した奥出雲町の船通山と雲南市の須我神社。
・八束水臣津野命は、他の国から引っ張ってきてつくった島根半島と松江市の意宇杜。
・大国主命は、出雲市の出雲大社。
・事代主命は、松江市の美保神社。
・そして三銃士の追加として素戔嗚尊とともに降臨した子神の五十猛命は、大田市。
それでは、『白波五人男』の名乗りを真似て紹介することにします。
櫛稲田姫命の着物を着て綺麗な女になり切った素戔嗚尊。八岐大蛇に見破られ、剣を抜いて猛々しく名を名乗る。
「知らざあ言ってきかせやしょう。天の浮橋でイザナギとイザナミが成せし国造り、ところが悲運の神生みで、使命途上であい別れ、真水の淵で洗いし雫、生まれなしたる三神の、三番目の神。高天ヶ原で勇猛果敢に大暴れ、この地に降臨し、鳥髪(とりかみ)の地で見染めた女子のために、いやいや葦原中津国(あしはらのなかつくに)をつくるため、正義の剣を抜きたるスサノオノミコトたぁ俺がこと」
出雲神話は、葦原中津国(ヤマトの国や日本の原型)をつくった素戔嗚尊から始まります。
斐伊川の上流にある鳥髪山(現在の奥出雲町の船通山)に降臨した素戔嗚尊。まずしたことは、八岐大蛇の謀略から櫛稲田姫(クシイナダヒメ)を守ることでした。酒に酔わせて退治した素戔嗚尊は、今の雲南市の大東に大きな宮を建て、日本最初の和歌を詠みます。
「八雲立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣作るその八重垣を」
それが、雲南市にある須我神社です。
暴れん坊だった素戔嗚尊は、地上に降り立つと一人の女性にひとめぼれ、この子を救うために八岐大蛇と戦い、勝利すると娶り大きなお社を建て、いつまでも大切し愛し続けると誓う歌を詠んだのです。なんとインテリゲンチャな神様でしょうか。
まずは三銃士を育てた素戔嗚尊、そのゆかりの地を訪ねましょう。たたら製鉄で有名な奥出雲の船通山と雲南市の須我神社です。
「問われて名乗るもおこがましいが育ちたるは大海原も見渡せる山の上。沖の先より島引きの 国引きはすれど侵略はせず、鍬と綱で『くによ、こーい、くによ、こーい』と、四つの大地を繋ぎあわせ大きな国にしたるは八束水臣津野命」
三銃士の一番目となるでしょうか。素戔嗚尊の子神です。
『出雲國風土記』に登場する八束水臣津野命の国引きがなければ、今の島根半島はありません。その島根半島に出雲大社や美保神社があります。
国引き神話の偉業を成し終えると杖を大地に刺し「オエ」と叫んだことから一帯を「意宇(おう)」の里と呼びます。松江市の古墳や遺跡が沢山ある「風土記の丘」です。
近くには八重垣神社、神魂神社、熊野神社と風土記の丘博物館があります。
「さてその次は兄神の嫉妬に二度も殺されて、そのたびに母神の力で蘇りしも、ここはやばいと先祖神の素戔嗚尊の元へと雲隠れ、七難八苦の試練を越えて武器と大軍をもって葦原中津国を統一。それでも北へ北へと進み、国の統合とともに流した浮世話も二度三度、だんだん超えたる国々に、やがて高天ヶ原の耳にも入り、寄こせ寄こせと無理難題。じゃかましいと飲酒外交路線でのらりくらりと浮世花、柔軟姿勢の神こそが、大国主命」
ご存知、出雲大社に祀られている神様です。大国主命はおもてになる神様で多くの女性との間に子供神を設け『古事記』では181柱と伝えています。縁結びの神様だけでなく子宝の多産の神様であります。
出雲市の大社、参道や稲佐の浜だけでなく、近くには日御碕神社や灯台、また出雲の古代史を展示した古代出雲歴史博物館もあります。
「続いて次に控えしは出雲の浜の海育ち、ガキの折から釣りが好き、島根半島を右左、ついたあだ名が『エビっさん』。政と音楽好きで、軍事のことや争いごとは弟神まかせ、高天ヶ原の平和外交の使いを飲めや歌えと懐柔したが、力で迫る暴力者に高飛びし、あとを隠せと舟返し、お名前も事代主神」
大国主神命と神屋楯比売命との間に生まれ、弟神は建御名方神(タケミナカタノカミ)。
高天ヶ原のアマテラスが、大国主命の納める葦原中津国が欲しいと武闘派の御雷神を送ると、大国主命は条件付きで国譲りを承諾し、美保ヶ崎で漁をしている子神の事代主命も承諾しました。建御名方神は抵抗しますが力で破れます。大国主命は国譲りを承諾し、事代主神が先頭に立てば「私の180人の子供たちも事代主神に従って天津神に背かないだろう」と言いました。
さて、事代主神にはマメな恋話があります。毎晩毎晩、見目麗しき女子のもとに船で通い、朝が開けぬ前に帰ります。ある夜明け前、鶏が寝ぼけていつもより早く『コケコッコー』。慌てた事代主神は舟を漕ぎだし、櫓を流して足で漕ぐうちにサメに噛まれてしまいます。恵比寿さんの絵を見ると分かりますが、片足隠しています。それ以降、美保関では鶏の卵を食べなくなりました。鶏を嫌う妻訪い(妻問い)の物語です。小泉八雲が美保関を訪ねた明治の頃でも鶏の卵を食べない風習が残っています。
■恵比寿と鶏の物語
「さてどん尻に控えしは磯風荒れえ大波を、樹木苗を担ぎて荒山に、植えて植えての緑の山の国造り、善事万里というからには、どうせ終めえは木の上と覚悟はかねがね石見の浜、辿り着いたる伊勢の浜、いやいや熱海の浜にも流れ着き、ただただ樹を植えることしか知らない、愚痴も嫌いな五十猛命」
『日本書紀』によると、とあり天(『古事記』では高天原)を追放された素戔嗚尊とともに新羅曽尸茂梨に降臨しましたが、スサノオがこの地に居ることは嫌だと言ったので斐伊川の上流「鳥上峯」に渡りました。今、鳥髪山を『船通山』と呼ぶのは、そんなところからきているでしょう?
多くの樹木の種を持っていましたが、最初の新羅には植えず、葦原中津国に来て植えたので緑の国になりました。SDGs的には貴重な話です。
なお出雲神話では、上陸地点は石見国の五十猛の海岸といわれています。アナゴ料理で有名な大田市の近くです。また奥には世界遺産の石見銀山があります。
『古事記』『日本書紀』『出雲國風土記』から、素戔嗚尊の降臨に始まり、元祖「ヤマトの国造り」にそって奥出雲、雲南市、松江市、出雲市、大田市を紹介しました。
この夏、すべてを訪ねるには大変かもしれません。もちろん神話以外に名所旧跡、現代の文化や美味しい食あります。皆さんのペースにあった旅をご検討ください。ただ、頭の中に国造りは素戔嗚尊に始まり、その子、そして子孫によってなされた系譜は忘れることなく。
また、出雲神話に関わるところはこれ以外に多くあります。イザナギとイザナミの永遠の別れとなる訣別の「黄泉の国」との境界点、素戔嗚尊に殺された八岐大蛇の亡骸の地、大国主の赤子を木に掛けて去った地など。どこかおどろおどろしい話になりますね。また隣の県の鳥取県には、「因幡の白兎」伝説もあります。
それぞれの神話については、是非、『島根国』の『神話と神々』の『出雲神話と神々』をご覧ください。
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