はじめに
Webサイト『島根国』を開設して一年が過ぎようとしています。
「島根を旅したいと考える人たちに、どんな情報や物語を提供したら喜ばれるか」の試行錯誤の毎日でした。それは、「島根に暮らす人の何を、どんな心を発信したらいいのか」を模索・反省するする日々もありました。
そんななか、島根に暮らす仲間から頂いたアイディアが、「島根に暮らす人たちの生活を訪ねてみたら」の叱咤激励でした。
7月から始めた取材です。みなさま方にお世話になり、学ぶことの多い出会いでした。
私たちは、島根旅行を検討している方に「伝える」前に、私たち自身が「どうあるべきか」を学び、「大切なもの」に気づく訪問でした。それをまとめたのが、『地方創生とSDGs』の『島根のSDGs』です。
素晴らしい出会いと学びを、2021年の締めくくりの報告とさせて頂きます。そして、決意も新たに、来年も、再来年も続けていく考えです。
取材させていただきました団体・企業名とタイトルを紹介させていただきます。
『合同会社グリーンパワーうんなん』職務執行者・勝部祐治様
『公益財団法人可部屋集成館』理事長・櫻井誠己様
『一般社団法人Expeおせわさん』代表理事・広瀬徹様、湯町淳子様
『公益財団法人絲原記念館』副館長・絲原丈嗣様
『株式会社石見銀山生活文化研究所』代表取締役所長・松場登美様
『中村ブレイス株式会社』代表取締役社長・ 中村宣郎様
『奥出雲多根自然博物館』館長・宇田川和義様
それぞれの取材記事は、『島根のSDGs』をご覧ください。
お話をお聞きして驚く私に、皆様が答えられました。
「地方創生だから、環境保護だから、SDGsが叫ばれるから、活動を始めたのではありません」。「私たちは、ここに生まれた時から地元を愛してきました」。「私だけではありません。先祖代々、そしてここに暮らす地域の人たちとともに自然や社会と交わってきました」。
そして「なにも特別なことではありません」。
取材させて頂いたみなさまの笑顔と声が残っています。
● 生活経済、自然破壊、グローバル視点等々。ある領域にスポットを当て問題を抽出して考えようとするから、なにか特別なことに見えてしまう。生活する、みんなと共に生きる観点から見れば当たり前のことです。『公益財団法人可部屋集成館』理事長・櫻井誠己様に学びました
● 誰かのために、何かをしようとする考えでなく、私たちを必要とされるかたに寄り添って、学ぶ。明るくふるまおうとするのでなく、出会いというものに感謝する。『中村ブレイス株式会社』代表取締役社長・ 中村宣郎様に学びました。
旅する人も、ここに暮らす人も、商品を売る人と買う人も、出会いという瞬間には立場に違いがあります。でも「生活者」という感性においては同じです。だからこそ、私たちは分かり合え、相手の大切なモノや考えを理解できるのです。自然も、文化も、生活も、互いが理解し合うことから始まると思います。
● 自然とヒューマンスケールのある町で、古(いにしえ)の良さと新しい時代の良さを、生産者や生活者をはじめ多くの人と語り合うことで創り出す。その営為の尊さを、『株式会社石見銀山生活文化研究所』代表取締役所長・松場登美様に教えていただきました。
● 旅する人と松江に暮らし、松江の良さを伝えたい人を結ぶ喜び。「青春」の思い出の街を、街の人たちと一緒になって創り出そうとする熱い思いを、『一般社団法人Expeおせわさん』代表理事・広瀬徹様、湯町淳子様に伝えて頂きました。
変わろうとするエネルギー、生み出そうとするエネルギー。人の英知には、破壊するのではなく、社会に貢献できる価値を創り出そうとする壮大な創造力というエネルギーもあります。共存も、創生も、多くの人との出会いや営為による創意工夫で生まれ、成長しています。
● 経営も庭の剪定も受け継がれた伝統と経験だけでなく、時代とともに思考するクリエイティブ性とアーティストな感性で実践される。率先して働かれる『公益財団法人絲原記念館』副館長・絲原丈嗣様に、その意義を教えて頂きました。
● 古民家再生の現象を見るのではなく、何を体験して頂くか、そのためにはどうあるべきか。また出会いがお客様にとって、地元の人々にとってどんなに意義深いものであるかを『奥出雲多根自然博物館』館長・宇田川和義様に教えていただきました。
● 山は生き物。その生き物から得た多くの恵みを忘れた人。山と交わることで山の再生と地域の生活の活性化を思考し、山の保護から生活財の安定供給まで大きなサイクルで考える。自然と社会を俯瞰することを、『合同会社グリーンパワーうんなん』職務執行者・勝部祐治様から教えていただきました。
今回の取材は、私たち『島根国』のメンバーにとって島根を知る以上に、島根に暮らし、働く人々から地域とともに生きることの創造性と矜持な心を学ぶ機会でした。
取材させていただきました皆様や関係者の皆様、そして取材のためにご協力いただきました皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。
このシリーズは、来年以降も続けます。今後ともよろしくお願いします。
島根を旅する人と島根に暮らす人の出会いが素晴らしいものになり、互いに思い出深い物語となるために、最後に提案させていただきます。
MIT元教授のダニエル・キム氏の理論に「成功の循環(theory of success)」という考えがあります。企業の組織活動の研修や活動に使われました。
「成功の循環モデル」とは、組織や集団の活動を4つの質で捉えます。
更に関係の質は高くなり、プラスの循環がまわります。
気の合う人とまた旅に行く関係や、来てほしいお客様との関係と同じですね。旅する人とそこに暮らす人が楽しい関係となり、循環が生まれれば最高です。
この考えを、今後、『島根国』の取材や紹介にあたって取り入れようと思います。
「成功の循環モデル」の真ん中に追加した丸が、一緒に旅するパートナーです。外の大きな輪が旅行先の観光関係の人や暮らしている人々です。
楽しい旅は、一緒に行く人だけでなく旅先の人に恵まれることで楽しくなります。迎える人とも良好な関係ができることが大切です。これを図にしたのが「共感のサイクル」です。
島根を旅する人と島根に暮らす人の関係でも、
互いに影響し合い、成長できる関係(関係の質)となれば旅行者はまた訪問し、島根に暮らす人にとってもやりがいを感じると思います。(思考の質)
このように良い関係が生まれ、成長し、行動に反映されます。
私たちは、取材を通して学び、互いに影響し合い、良好な関係をつくることがどんなに大切であるかを学びました。 いろんな団体企業の皆様の取材を計画しています。旅行者の皆様にとっても、旅行者の皆様を迎い入れる島根の皆様にとっても参考になれば幸いです。
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